【J1コラム】甦った大宮 渋谷監督が減らした2つのもの

2014年10月19日 熊崎敬

新監督は選手を大人扱いして――。

FC東京を下した大宮は14位に浮上。監督交代後、守備が安定し、5勝1敗と波に乗る。 (C) SOCCER DIGEST

 今季のJ1は5チームで監督交代が行なわれる、慌ただしいシーズンとなった。鳥栖を除く4チームは、降格回避のための交代。2度の交代を行なったC大阪も、一度目は優勝するための交代だったが、2度目は降格を免れるための交代となってしまった。
 
 即効性が求められるシーズン途中の監督交代は、後任が前任者の成績を上回らなければ意味がない。果たして4チームの交代は上手く行っているのか、「ビフォー&アフター」の勝点獲得率を比較すると、明暗が浮き彫りになった
 
【13位 仙台】
アーノルド/6試合0勝2分け4敗:11%
渡邉晋/22試合8勝6分け8敗:45%
 
【14位 大宮】
大熊清/22試合3勝7分け12敗:24%
渋谷洋樹/6試合5勝0分け1敗:83%
 
【16位 清水】
ゴトビ/17試合6勝3分け8敗:41%
大榎克己/11試合2勝1分け8敗:21%
 
【17位 C大阪】
ポポヴィッチ/13試合4勝4分け5敗:41%
ペッツァイオリ/9試合0勝4分け5敗:15%
大熊裕司/6試合2勝0分け4敗:33%
 
 いまのところ交代が奏功しているのは、仙台と大宮。特に大宮の渋谷監督は5勝1敗とチームを甦らせ、17位に沈んでいたチームを14位に引き上げた。
 
 過去、チームをV字回復させた監督交代として印象深いケースがふたつある。
 
 ひとつは2005年の大分、シャムスカの例だ。
 彼は残り12試合の時点で17位に低迷していた大分を、瞬く間に立て直した。7勝3分け2敗という驚くべき成績で11位まで浮上させ、「シャムスカ・マジック」と呼ばれた。
 
 もうひとつは08年の千葉、ミラー監督の例。
 13節時点で最下位のチームを託された彼は21試合で8勝6分け7敗、最終節に劇的な逆転勝ちを収め、千葉を残留に導いた。このときの千葉は、ミラーが所属していたリバプールになぞらえて「千葉プール」と呼ばれた。
 
 さて、大宮である。この調子で残留を果たしたら、渋谷監督もシャムスカ、ミラーと並んで救世主と呼ばれるだろう。すでにサポーターの間では「渋谷マジック」という言葉も出始めている。
 
 では、沈滞ムードを一変させた渋谷マジックの正体とは何か。
 
 いちばんは守備の再建だろう。大熊時代2点を超えていた1試合あたりの平均失点が、1点以下に激減した。
 
 失点以外にも新監督が激減させたものがある。それはミーティングだ。
 大熊前監督は何度もミーティングを開き、一部の選手から「試合直前はひとりで集中したい」という声も上がっていた。そうした声をコーチとして耳にしていた新監督は、選手を大人扱いしてミーティングを減らしたのだ。
 
 GK北野貴之は「渋谷さんは、ぼくらのストレスを取り除いてくれました。集中しやすい状況を作ってくれているんです」と語っている。

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