待ち望んでいた舞台で躍動!! 広島、ACL決勝T進出の立役者は堅守を象徴するセンターバック!

2019年05月10日 寺田弘幸

「Jリーグではなかなか見られないような選手と対戦して、もっと成長していきたい」

広州恒大戦、中国代表FWのガオ・リンを抑え込む野上。望んでいた舞台で大いに躍動してみせた。(C) Getty Images

 2度目のACLグループステージの突破は、22選手がピッチに立って勝ち取った。文字通りチームの総力を結集して戦ってきたグループステージ(GS)だったが、その中でひとりだけ首位通過の立役者を挙げるならば、野上結貴の名を挙げたい。GS3節・大邱戦から3試合連続で出場している背番号2は、堅守を構築して3試合ともクリーンシートを達成。特にGS4節の大邱戦に続いて5節の広州恒大戦も3バックの中央でプレーした野上のパフォーマンスは圧巻だった。
 
 3バックの中央に入った野上は、より一層周囲に気を配りながら危険な場所を察知してディフェンスラインを統率した。リーグ戦で3バックの中央を担っている吉野恭平が「周りを見る回数がすごく多く、いいポジションを取って先に危険なスペースを埋めていた。そこは見習わないといけないところだと思います」と広州戦の野上のプレーを評したように、危ない場所を野上がケアし続けていたことで、広州の攻撃陣に得点チャンスを与えなかった。
 
 42分に唯一決定機を与えた場面も、野上がゴールマウスへカバーに入ってシュートを弾き出している。
「シンプルにカバーするためにゴールの中に入っただけでしたけど、前半をゼロで終えるためには、あのプレーは大きかったと思います」
 
 絶体絶命のピンチを救った野上は平然と振り返ったが、「僕が真ん中で出たら絶対に失点したくないと思っている。真ん中は最後のところを守るポジションだと思うんで、それができたことは自信になります」と充足感を滲ませていた。
 
 野上自身、初めて出場しているACLを純粋に楽しんでいる。これまで国際舞台とは縁のないキャリアを送ってきただけに、今大会はずっと望んできた舞台。「このチームに来るときもACLが決め手だった」と言う野上は、「大邱の攻撃陣もいい選手が多かったし、ガオ・リンは何でもできる素晴らしい選手だった。ACLを初めて経験できていますけど、すごく楽しい。もっといい選手、Jリーグではなかなか見られないような選手と対戦して、もっと成長していきたい」とさらなる猛者たちとの対戦を望んでいる。
 
 ノックアウトステージを勝ち進めば進むほど、強烈な個の力を有すアタッカーとの対戦が待っていることは間違いない。「対人能力が自分の長所」と自負する野上にとって、格好の腕試しができる大会だ。相手が強ければ強いほど、28歳になったばかり伸び盛りのDFのポテンシャルさらに引き出されていくに違いなく、それを野上自身が誰よりも楽しみにしている。

取材・文●寺田弘幸(フリーライター)
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