システム変更で引き出された仙台の「財産」。4-4-2への回帰は後退ではない

2019年05月01日 板垣晴朗

ルヴァンカップでは無敗ながら、リーグ戦では勝ち星が増えない

リーグ戦でなかなか勝ち星が伸びない仙台だったが、9節のG大阪戦で3試合ぶりの勝利を挙げた。写真:徳原隆元

 ベガルタ仙台を率いる渡邉晋監督が2017シーズンに最も多く聞かれたのが「なぜ、基本フォーメーションをそれまでの4−4−2から3−4−2−1に変えたのか?」という問いだった。この年の仙台はそのような変化のもとで、多くの選手がボールに関わりながらポジションを変えるスタイルを、構築していった。
 
「形が変わったことを、注目されることが多かった。確かに、景色が変わるところも大きいでしょう。でもこれまでの積み上げがあってこそのトライなので、私としてはそんなに大きく変えた感覚はなくて、今までの狙いがあってのこと」
 
 というのがそのシーズン末期においての指揮官の答えだった。そして、こうもつけ加えている。
 
「最適な立ち位置を取る上で、今はスタート地点を3−4−2−1にしているということ。それはまた変わることもあるでしょうし、また4−4−2の形をとるかもしれません」
 
 そして2019年の春に、その言葉は現実となった。
 
 今季の仙台はルヴァンカップでは無敗と好調ながら、リーグ戦ではなかなか勝ち星が増えない。10人もの戦力が入れ替わり、開幕前の戦術の浸透に時間がかかる可能性はあった。それでも長い時間をかけて作り、改良している仙台のプレーモデルは、これまでも選手の入れ替わりがあっても機能してきた。ルヴァンカップで結果を出した選手を、リーグ戦に引き継ぐことも試みてきた。では、もっと結果を出すために、今度は何を変えなければいけないのか。
 

 渡邉監督は4月24日のルヴァンカップ・グループステージ4節・鳥栖戦で、4−4−2の採用を決断した。直前のリーグ戦で選手にオフを与えて回復をはかる一方で、自らは多くの試合映像を見返し「我々にある、ポジティブな点を結果に結びつけるため」と、手を施すに到った。

 鳥栖戦ではわずか2日間しか準備期間がなかったこともあって、ぎこちないところもあって引き分け。しかしボール保持者の周囲に多角形を形成するポジショニングを複数で行ない、縦横のポジションチェンジも円滑になった。
 
 そしてそれから中3日で迎えたJ1リーグ9節・G大阪戦で、メンバーは入れ替わりながらも4−4−2は継続。すると立ち上がりから相手を押しこみ、敵陣内で複数人が関わってゴールに迫る。守っても、相手を追いこむコンパクトな隊形を作る動きから迷いが減っていた。終了間際に長沢駿のゴールによって劇的な逆転勝ちを収めたが、決めるチャンスはもっとあった。

次ページ4-4-2への変更は、選手がやりやすくするための初期配置だった

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