「いつかもう一度、日本で――」鹿島戦で見せた邦本宜裕の“恩返し”の一発

2019年04月25日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「サッカーは自分の職業。辞めたくない」

鹿島戦で決勝点をマークし、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに選出。要所でプレーに絡みながら、攻撃をリードした。写真:滝川敏之

[ACL4節]鹿島0-1慶南/4月24日/カシマ

 勝負を決する決勝点を叩き込んでみせた。

 0-0で迎えた63分、ジョードン・マッチのクロスに、ファーサイドへ走り込んできた邦本宜裕が左足でプッシュし、ネットを揺らす。鹿島とのアウェーゲームに挑んだ韓国の慶南はこの1点を守り切り、敵地で貴重な勝点3を手にした。

 殊勲の21歳は、自らの活躍に浮かれることなく、静かに語る。

「今回のことに満足せず、これからもっともっと練習から真面目にというか、私生活もそうですけど、常に謙虚な気持ちで、どんなこともやっていきたい」

 10代から将来を嘱望されていたレフティだ。浦和ユース時代には、2種登録されていた16歳の時、天皇杯に出場し、ゴールも決めた。その後、浦和ユースを退団も、2015年シーズンに福岡に加入。Jリーグ・アンダー22選抜でJリーグデビューを飾り、2年目の16年シーズンでは20試合に出場するなど、貴重な戦力として活躍を見せた。

 世代別代表にも選ばれるなど、自慢の左足を駆使した卓越したテクニックは誰もが認めるところだったが、福岡で3年目を迎えた17年シーズンの5月19日、クラブから契約解除の知らせがリリースされる。

 その主たる内容は、邦本の契約条項違反。クラブの秩序風紀を著しく乱したとされ、邦本及びクラブ双方合意の下、契約解除が決まった。

 しばらくは無所属の時期が続いたが、18年、韓国の地で再スタートを切る。現在所属する慶南の一員として再び、ピッチに戻ってきた。

「去年は、最初はキツかったですけど、でも慣れてきて、やっぱりサッカーって楽しいなって。サッカーは自分の職業で、辞めたくない気持ちがすごく強くなった」

 いろんなことを考えさせられた1年間だった。サッカーができる喜びを噛み締めたし、自分のしてきたことを悔やんだりもした。

「あの時から、こういう風に思えていたらなとか、自分が情けないなとも思った。充実もしていましたけど、辛いことも苦労もいっぱいありました」

 それでも挫けなかった。今度こそ、サッカー選手としてまっすぐに生きようと、固く心に誓ったのだろう。

「周りの人に支えられて、今の自分がある。ここまで来ることができたのも、自分ひとりだけの力ではない。その感謝の気持ちを持ち続けて。自分のとりえはサッカーしかない。そのサッカーで、支えてくれたみんな、応援してくれる人たちに恩返しできたらと思っています」

【ACL PHOTO】鹿島 0-1 慶南|元福岡、邦本の1点に泣いた鹿島。今大会初黒星を喫しGS突破王手はならず

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