「止めれない失点じゃなかった」首位攻防戦にも怯まない19歳、GK大迫敬介が描く物凄い成長曲線

2019年04月22日 寺田弘幸

大迫はビッグプレーを平然と振り返った

大迫は「シャットアウトすることで自分の評価も上がっていくと思っていました」と首位攻防戦に憶することはなかった。写真:徳原隆元

[J1リーグ8節]広島0-1FC東京/4月19日(金)/Eスタ

 無敗の2チームがぶつかった首位攻防戦は、フライデーナイトマッチだったことも重なって多くの耳目が集まった。
 
「注目されている試合だったと思いますし、そこで自分がシャットアウトすることで自分の評価も上がっていくと思っていました」
 
 19歳のGKは野心を隠すことなくゴールマウスに立っていたが、その意気込みが空回りしないのが大迫敬介のすごいところである。FC東京の攻撃パターンはしっかりと頭に入っていた。ゴール前に入ってくる選手もよく見えていた。
 
 19分にFC東京の2トップに深い位置まで入り込まれ、後ろから駆け上がってきた橋本拳人にシュートを打たれた。最初のシュートストップが決定的な場面となったが、大迫は落ち着いてボールの軌道を見て左手を伸ばしてシュートをワンタッチ。僅かでも触ったことでボールはポストを叩いて失点を免れている。
 
 このビッグプレーを大迫は平然と振り返った。
 
「相手がサイドの深い位置まで入ったときにマイナスに来るっていうのは分かっていましたし、シュートに入ってくるところも見えていた。最後までボールを見続けることができたので対応できたと思います」

 唯一の失点シーンとなった場面も大迫はディエゴ・オリヴェイラがシュートを狙ってくることは分かっていた。
 
「ボールがこぼれたとき、ディエゴ・オリヴェイラ選手が狙ってくることは分かっていたんです」
 
 だが、準備が間に合わなかった。グラウンダーのシュートをゴールマウスに蹴り込んだ相手のフィニッシュを褒めるべき得点だったが、大迫は「もう少し早い準備をしておけば防げた失点だった。止めれない失点じゃなかったので、そこが一番悔しいです」と話す。ただ、決してうつむいていたわけではない。「あそこで防ぐことができるGKになりたい」と続けた。
 
 澤村公康GKコーチが「盛り上がっている時も冷静な自分がいて、うまくいかない時にも表情を崩さず冷静でいられる」と称える大迫のメンタリティは、今節の大舞台でもまったくブレることはなかった。シュートが3本ずつという緊張感の張りつめた試合でなかでも、大迫はハーフタイムに審判に駆け寄ってセットプレーの時に永井謙佑がGKの前に立って邪魔をしているところをしっかりと見てほしいと進言している。
 
 試合ごとにたくましさを増している新進気鋭のGKは、首位攻防戦で感じた悔しさも糧にしていくことは間違いない。「失点はマイナスに捉えがちなんですけど、勇気をもって捉えることでプラスにもなる」という指導方針の澤村コーチとは、試合が終わるとふたりで振り返る時間をとっている。
 
「うまくいかなかった時、スキルのエラーなのか、戦略、戦術のエラーなのか、フィジカルのエラーなのか、メンタルのエラーなのか。それをちゃんと分析して次につなげていけば、GKはまた次の試合に勇気をもってゴール前に立てるんです。ゴール前にワクワクした気持ちで立たせることがGKコーチの仕事だと思っています」(澤村コーチ)
 
 コーチの支えも受け、大迫はいつも前を向く。U-20ワールドカップも1か月後に控える大器は今、多くのことを吸収してすごい角度の成長曲線を描いている。
 
取材・文●寺田弘幸(フリーライター)
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