中井卓大が体現した“マドリーの気品”。日本サッカー界の超逸材が見せた試合後の振る舞いとは?

2019年04月20日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

フラストレーションを溜め込んだチームメイトたちに…。

中井はプレー面だけでなくメンタルの面でも着実に伸びているようだ。 写真:田中研二

 キリンレモン CUP2019が4月19日に開幕。湘南ベルマーレや東京ヴェルディ、ジェフ千葉など、国内外の計8クラブのU-16以下(2003年生まれ以降)の選手たちが、熾烈な戦いを繰り広げている。

 そのなかで、ひと際注目を集めているのが、優勝候補の筆頭とされているレアル・マドリーと、その一員として日本に凱旋した中井卓大だ。

 東京ヴェルディと桐光学園との2連戦では、いずれも先発でピッチに立ち、ゲームメイカーとして巧みにパスを散らしては、隙あらば自らドリブルで持ち上がってゲームをコントロール。2戦ともに安定したパフォーマンスを披露した。そのプレーに対して、トリスタン・ダビッド・セラル・ロドリゲス監督も、「モドリッチに近い選手になる」と称えたほどだった。

 迎えた大会2日目。前日の疲労を考慮された中井がベンチスタートとなった湘南との一戦は、マドリーが先手を取りながらも、相手の素早いフォアチェックに苦戦。前半のうちに追いつかれて、そのまま1-1のドローで試合を終えた。

 大会3連勝を逃したマドリーの選手たちは明らかなフラストレーションを溜め込んでいた。それは、試合終了直後にレフェリングに対して不満を抱いた何人かの選手が、審判団に詰め寄るシーンにも見受けられた。
 
 一様に不服そうな顔を浮かべ、だらけた態度を見せたマドリー選手たちのなかで、気品を示したのは、後半7分からピッチに立った中井だった。

 試合終了後、チームメイトたちに率先して声をかけ、湘南ベンチ前へと誘導。この引き分けで優勝を決めるノックアウトステージに回れなかった相手の下へときちんと挨拶に出向いたのである。

 こうしたピッチ外での姿勢は、今大会のマドリーが重要視しているところでもある。実際、前日の東京ヴェルディ戦後にロドリゲス監督は、「サッカーとは別に我々は良い人間になるように教えている。日本人からそういうところを学びたい」と語っていた。中井の行動は、そんな指揮官の意向に添うものだった。

 マドリーのイムノ(応援歌)にはこんな一節がある。

「争いに敗れた敵には、妬むことも恨むこともなく手を差し伸べる」

 このクラブが掲げる教えを自ら体現してみせた中井。あの振る舞いは、小学4年生で渡欧してからマドリーで研鑽を積んでいる彼の未来が楽しみになるワンシーンであった。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事