ミニマリズムと効率を――ペップ、2年目の変身 【バイエルン番記者】

2014年10月08日 パトリック・シュトラッサー

彷彿とさせるのは「ユップスタイル」

3バックの新機軸は一旦棚上げにし、いわばハインケス時代へ原点回帰。2年目のペップを番記者が考察する。 (C) Getty Images

 バイエルンは9月を無失点で終えた。4試合で5失点を喫した8月から一転、公式戦6試合(ブンデスリーガ4試合、チャンピオンズ・リーグ2試合)でひとつのゴールも許さなかった。
 
 この劇的な改善の理由は、ジョゼップ・グアルディオラ監督が「完全な守備」を目指したからだ。リスクを顧みず、ポゼッションサッカーを追求していたペップ(グアルディオラの愛称)が変身した。移籍期限直前に獲得したのは、ボランチのシャビ・アロンソとCBのメハディ・ベナティア。ペップは、いわばチームを原点に回帰させたのだ。3冠を成し遂げた「ユップ(ハインケス前監督)スタイル」という原点にだ。
 
 守護神マヌエル・ノイアーの前で最終ラインを固めるのは、ジェローム・ボアテング、ダンチ、ベナティアという強靭なCB陣。大きいのは、やはりベナティアの加入だ。8月中旬にハビ・マルティネスが左膝の前十字靭帯を断裂すると、グアルディオラはこのモロッコ代表CBの獲得を強く求めた。ホルガー・バドシュトゥバーがふたたび怪我で戦列を離れたが、CBは質・量ともに十分で、ハインケス時代のように、「コンクリートを作る」ことができている。
 
 アウェーに乗り込んだチャンピオンズ・リーグ(CL)のCSKAモスクワ戦で、バイエルンはクラブレコードを塗り替えた。パス総数918本は、CLでのクラブ史上最多記録だった。2−0で勝利したブンデスリーガ6節のケルン戦では、アロンソが204回のボールタッチを記録し、リーグ最多を更新した。
 こうした記録の数々は、中盤の機能性が高い証拠だ。アロンソとフィリップ・ラームのダブルボランチは非常にバランスよく機能している。ハインケスのチームも、バスティアン・シュバインシュタイガーとマルティネスのダブルボランチが攻守の要として抜群の機能性を誇った。
 
 膝蓋腱の怪我でフランク・リベリを欠きながらも、ペップはサイドアタックを十分に活用している。アリエン・ロッベンと、入団2年目でいよいよ本領を発揮しつつあるマリオ・ゲッツェがその担い手で、危険なシーンを作り出す。アロンソとラームのダブルボランチに、このロッベンとゲッツェを両翼に配した4-2-3-1は、まさにユップスタイルそのものだろう。トップ下のトーマス・ミュラーが縦横無尽にスペースを突くその様は、3冠を達成した2シーズン前を彷彿とさせる。
 
 ショーと大量得点ではなく、ミニマリズム(最小限主義)と効率――。ペップのニュースタイルは、確実に完成に近づいている。
 
【記者】
Patrick STRASSER|Abendzeitung
パトリック・シュトラッサー/アーベントツァイトゥング
1975年ミュンヘン生まれ。10歳の時からバイエルンのホームゲームに通っていた筋金入りで、1998年にアーベントツァイトゥングの記者になり、2003年からバイエルンの番記者を務める。2010年に上梓した『ヘーネス、ここにあり!』、2012年の『まるで違う人間のように』(シャルケの元マネジャー、ルディ・アッサウアーの自伝)がともにベストセラーに。
【翻訳】
円賀貴子
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