【現地発】「チームとしての成長を感じられた」欧州遠征でなでしこ指揮官が掴んだ”手応え”の正体。

2019年04月13日 中野吉之伴

フランス戦の敗北を経てドイツと対戦

欧州で体験した2試合を、主将の熊谷(左)は冷静な視点で振り返っている。 (C)Getty Images

 フランスで6月7日に開幕する女子ワールドカップ開催まで、2か月を切った。

 4月1日から11日まで欧州遠征を行なった日本女子代表・なでしこジャパンは、9日に行われたドイツ戦の先発に、敗れたフランス戦のスターティングメンバーから、GK山下杏也加を平尾知佳、FW横山久美を菅澤優衣香、小林里歌子を遠藤純に入れ替えて臨んだ。

 1-3で完敗したフランスとの親善試合で浮かび上がった課題を修正しようと意気込むなでしこジャパンは、守備面に改善の兆しを見せた。特に前半は、中盤でうまく数的有利な状況を作り出し、ボールを回収するシーンが少なくなかった。

 うまく守りが機能した日本に対し、17歳のレナ・オーバードルフなど出場機会の少ない若手にチャンスを与えたドイツは、ビルドアップから打開しようと試みるが、パスのテンポとタイミングが遅く、細かいパスやトラップのミスも続き、自然とロングボールを多用するようになる。

 そうなれば日本は守りやすくなり、ワントップのアレクサンドラ・ポップやジェニファー・マロジャンへのロングボールを多用するドイツに対し、CB熊谷紗希、南萌華が起点をしっかりとつぶして跳ね返した。時折、サイドへ素早く展開されピンチになる場面もあったが、全体的に帰陣のスピードが速く、GK平尾も落ち着きのあるプレーで好セーブを披露する。

 35分に長谷川唯が決めた先制点は、ドイツ代表GKのアルムト・シュルトのミスパスを奪い、自らシュートまで持ち込んだ末のゴールだった。その後も点を取りに前がかりになった敵DFの裏を突き、得点には結びつかなかったが、好機を創出している。

 45分を1点リードかつ無失点で切り抜けた前半の出来は、ポジティブに捉えられる内容だった。

 では、後半はどうだったか。

 日本は攻撃面では積極的なプレスをかけてくるドイツを相手に、日本はボールを前へうまく運べなくなってしまった。その打開策を見つけられなかった点は、積み残した課題と言える。

 また、守備網も少しずつほころび始めた。だんだんとディフェンスラインの裏へパスを通された際の対応が遅れ、クロスに対するポジショニングや相手の高さに競り負け、押し込まれる時間帯が続いた。

 しかも、ドイツに奪われた2点はいずれもサイドからのクロスが起点だった。

 53分、左サイドの空いたスペースを使われ、ジェニファー・マロジャンにクロスを上げられる。ゴール前の対応が遅れた隙を逃さず、ポップに強烈なヘディングシュートを叩き込まれてしまう。

 69分にGKシュルトが再び味方へのパスをミスすると、素早く反応した横山がゴールを奪い、2-1とリード。だが、72分に再び左サイドから上がったクロスをGK平尾が掴み損ねたところを、今度はスべニア・フートに押し込まれた。

 結果は2-2のドロー。日本の欧州遠征は1分1敗の未勝利に終わっている。

 当事者たちはこの結果をどう受け止めているのか。ドイツ戦を終えて、右SBで72分まで出場した清水梨紗は、こう語った。

「フランス戦ではサイドからクロスを何度も入れられてしまったのが、一番の課題として残りました。それを防ぐため、今回はチームで守備をスライドするという話をして、自分のサイドでは思いっきりボール(保持者)につこうと決めていた。それがうまくいった部分があったので、そこは収穫かなと思います」

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