【J2】「反町大先生」の戦略を完遂 強い松本山雅が帰ってきた|横浜FC 0-2松本山雅

2014年10月04日 熊崎敬

船山や岩沼が仕掛けるたびに、CKや好位置でのスローインに。

左サイドからの攻めを徹底して相手を攻略。反町監督の戦略が的中し、松本は6試合ぶりの勝利を手にした。(写真は30節湘南戦) (C) Getty Images

 強い松本山雅が帰ってきた。
 
 9月は3分け2敗の未勝利。3位のジュビロ磐田に勝点差5に迫られた。だが超満員となった西が丘での横浜FC戦で、彼らは完璧な試合運びをやってのける。
 2分に岩上祐三のCKを犬飼智也が、31分には今度は岩上がFKを直接捻じ込み2-0。セットプレーの強さ見せつけた松本は6試合ぶりの白星を挙げ、今節敗れた磐田との差を勝点8に広げた。
 
「ぼくが反町大先生との勝負に負けたというところです」
 横浜の山口素弘監督は試合後、苦笑交じりで横浜フリューゲルス時代のチームメイトを持ち上げた。実際に反町と山口の監督対決は、5歳年上の前者が采配で上回った印象が強い。
 
 横浜のMF小池純輝が、松本の試合運びについて興味深い分析をしていた。
「とにかく徹底して蹴ってくるんです。極端にいえば、今日はコーナーフラッグ目指して蹴ってきた。前半は、その松本のプレッシャーを受けてぼくらまで蹴ってしまい、相手の得意なゲームになってしまった」
 
 小池が語るように「反町大先生」のゲームプランはいつも、ものすごくはっきりしている。彼は入念なスカウティングで勝利の鉱脈を探り当て、選手たちに叩き込む。
 
 この試合で松本が徹底したのは、左サイドからの攻撃だった。
 松本は敵の背後に浮いた左サイドの船山貴之に、ボールを集め続けた。船山が躍動すると、松本はチーム全体が活気づく。後手に回った横浜が船山を抑えにかかると、今度は絶妙なタイミングで大外から岩沼俊介が駆け上がる。
 
 船山や岩沼が左サイドから仕掛けるたびに、その多くがCKや好位置でのスローインに結びついた。こうなると岩上のセットプレー、精度の高い右足と強烈なスローインが生きてくる。つまりすべてのプレーが、松本最大の武器であるセットプレーに集約されてくるのだ。実際に前半に敵を圧倒した松本は、前述したようにセットプレーをゴールに結びつけ、勝点3をつかみ取った。
 
 攻撃を牽引する船山、岩上のふたりが脚光を浴びる松本だが、守りも非常に堅い。
 後半、横浜は選手交代やシステム変更を駆使して流れを変えようとしたが、松本守備陣は崩されることがなかった。岩間雄大や喜山康平は無尽蔵のスタミナでボールを狩り続け、3バックはスパルタの砦のように最後まで敵を寄せつけなかった。
 
 足踏みが続いた9月が終わり、10月になったことで松本は良い時の試合運びを思い出したようだ。
 それには敵地にもかかわらず、観客席の6割近くを埋めたサポーターの後押しが間違いなく大きい。
 
 松本サポーターの影響力について、横浜の山口監督は次のように語っていた。
「予想したほど緑に占拠されなかったんですが、それでもスローインをすれば盛り上がり、パスカットをすれば盛り上がり、シュートをすれば盛り上がる。ウチがそれでプレッシャーを受けるわけではないですが、相手がノルということはあるでしょう。自分がものすごく良いプレーをしていると錯覚することもあるでしょうし」
 
 そう、いうまでもないことだが、松本の快進撃は情熱的なサポーターが生み出す熱気なしには考えられない。
 
取材・文:熊崎敬
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