【浦和】森脇良太はなぜブーイングが起きた青赤のアウェースタンドに頭を下げたのか?

2019年04月05日 佐藤亮太

因縁の発端は5年前のワンプレー

FC東京戦で起死回生の同点弾を放った森脇。試合後、アウェースタンドに挨拶へ向かったワケとは? 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 その時、浦和レッズDF森脇良太は、青赤のアウェースタンドに向かい、深々と頭を下げた。そこにはどんな思いが込められていたのか。
 
 劇的な同点弾での幕切れだった。3月30日、J1・5節の浦和レッズ対FC東京戦。毎回、このカードは見応えたっぷりの名勝負数え歌。今回もそうだった。1-0、FC東京優勢で迎えた試合終了間際。途中出場のDF山中亮輔が左サイドからペナルティエリアに侵入し、横パス。2人のFWが作ったスペースに飛び込んだのが森脇だった。はやる気持ちを抑え、冷静に押し込み、ネットを揺らすとすぐにボールを持ってセンターサークルへ駆けた。ここで終了のホイッスル。浦和がラストプレーで同点に追いついた。
 

 FC東京サポーターにとって負けに等しいドロー決着。2004年以来、埼スタでの勝利が目の前で消え、首位から引きずり降ろされた。まして、決められたのはあの森脇とは・・・悔しさ5倍増しだったはずだ。森脇への嫌悪感はプレーに関与するたびに浴びせるブーイングで表現された。
 
 森脇良太とFC東京サポーター。この因縁の発端は5年前に遡る。14年8月23日に行なわれたリーグ21節。それは30分過ぎに起きた。森脇がFW平山相太からボールを奪うべく、向かったところ、森脇の出した足が平山の右足を直撃。このプレーで平山は負傷。右足首骨折で長期離脱を余儀なくされた。何度もケガを乗り越え、ようやく本調子に戻った矢先での平山の大ケガに、選手への愛情深いFC東京サポ―ターが森脇を恨み骨髄に思うのは無理もない話しだ。
 
 今回もブーイングを受け続けた森脇はどう思っていたのか? その答えは・・・あまり気にしなかったということ。むしろ、それどころではなかったと言ったほうが良い。毎年のようにライバルが加入するなか、森脇は技術の高さでレギュラーを簡単に渡さなかった。しかし、昨季、森脇自身3度のケガに泣かされ、リーグはわずか11試合のみ。それだけに「今年こそは」の気持ちが強かった。
 
 今季リーグ開幕戦 アウェー仙台戦はベンチ外。続く2節の札幌戦ではベンチスタートながら出番なし。与えられたチャンスでいかに結果を残すかに邁進した。そしてFC東京戦で出番が与えられた。さらに、この試合は今季初の4バック。攻守のバランスが問われる不慣れなシステムに「プレーに集中していたので、聞こえなかった」と必死だった。
 

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