柏、開幕4連勝後の“足踏み”はなぜ起きたのか。ネルシーニョ監督の要求に選手の反応は?

2019年04月03日 鈴木潤

優先順位は「奪ったボールを速くゴール前へ運ぶ」だが…

柏は第5節の岡山戦、第6節の東京V戦で敗戦。2試合はともに無得点だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 開幕4連勝という好スタートから一転し、柏は5節の岡山戦、6節の東京V戦とまさかの連敗を喫した。
 
 岡山戦では3本のシュートがポストとバーに阻まれるなど運に見放され、東京V戦でも前半に作った4度の決定機で決めきれず、逆にわずかな隙を突かれてしまったことも連敗の原因ではある。しかし連敗した2試合はともに無得点。さらに開幕からの6試合でもわずか5得点しか挙げておらず、柏は極度の得点力不足に悩まされている。
 
「ゴールを決めにかかるとなった時に、前への意識、縦に出すくさびのパス、斜めにつけるパス、そういうことを選手たちに強く要求しています。"前"というのがいまチームとして取り組んでいるテーマです」
 
 このネルシーニョ監督の説明にある通り、チームの優先順位として「奪ったボールを速くゴール前へ運ぶ」という狙いがある。ただ、第一次政権時を知り、監督の要求を熟知している大谷秀和は「監督は『前へ』と言うが、何が何でもすべてが前に行けというわけではない」と補足する。実際にネルシーニョ監督も、柏本来のストロングポイントである「ポゼッションも活かしていきたい」と話していることから、問われるのは縦に速い攻撃とパスをつなぐポゼッションを状況に応じて使い分けることになる。
 
 例えば、ボールを奪った瞬間に前方に広大なスペースがあるのならば縦に素早い攻撃を仕掛けるべきだが、相手が陣形を整えてブロックを形成し、自分たちの攻撃の枚数が足りていないのであれば無理に前には運ばず、ボールを動かして相手を揺さぶる攻撃が求められる。

 ただ、ポゼッションの場合、相手DFに狙われているにもかかわらず、足もとへの縦パスを入れて前向きで奪われようものなら、そのリスクを冒した選手には監督から容赦なく厳しい声が向けられることが度々ある。決してパスをつなぐことやビルドアップを禁止しているわけではないが、指揮官の優先順位として"前"が先に来ること、そしてビルドアップの途中のパスでボールを失った場合には厳しい指摘が出ることから「マイボール時には素早く前へ」と選手の意識が偏りがちとなり、攻撃のベクトルが前方向にしか向かない傾向が強くなってしまう。
 

次ページネルシーニョ監督の第一次政権時を知る選手は、ほんの一握り

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事