毎日10分の“鳥かご”が大躍進の鍵!? J2初参戦で首位を走るFC琉球に「良い距離感」が生まれるワケ

2019年04月02日 仲本兼進

開幕戦の前半に洗礼を浴びるも、最終的には逆転勝利を収める

6節を終えてJ2で首位を走るFC琉球。J2初参戦ながら快進撃を見せている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 3月の戦いを終え4勝2分無敗。今年J2リーグに昇格したばかりのチームがここまでの躍進を遂げることをどれだけの人たちが想像できただろうか。
 
 とりわけ福岡との開幕戦はチームにとって、序盤戦の流れを左右する大きな一戦となった。この試合で琉球は、早速J2の洗礼を浴びている。ハイボールの競り合いやセカンドボールの立ち位置と予測で後手に回り、こぼれ球に対してのフィジカルコンタクトといった部分では大概琉球の選手が転倒していた。36分には左からのクロスボールに琉球の選手が身体を入れるも松田力に跳ね返されヘディングシュートを決められた。まさにJ2の強度を思い知る形となっていたわけだが、最終的には3-1で勝利したのは琉球だった。

 
 1-1で迎えた72分。鈴木孝司のくさびからワンタッチでボールを受けた中川風希がオフサイドラインぎりぎりを突破した田中恵太にパス。その後エリア内で倒されPKを獲得した。ハーフウェーライン付近でボールを奪取し、わずか4本のパスで得たPK。このシーンは今年の琉球のサッカーを象徴するシーンと言える。
 
「(福岡戦の)前半の失点は選手間の距離が遠くなったことが一番の原因。結果、セカンドボールが拾えなくなり相手のリズムとなった。なので、ハーフタイムに『自分たちからアクションを起こしていこう』と選手たちに伝えた。彼らにはそれができるし、距離感を維持すればワンタッチ、ツータッチでスムーズにボールを動かすことができる。それができた結果、3-1というスコアになったと確信しています」
 
 そう話すのは今年から琉球の監督に就任した樋口靖洋監督。チーム全体でゴールに向かう姿勢を追求し続ける指揮官は、そのスタイルを見出す上で選手たちに攻守の積極性を求めている。攻撃では枚数とポジショニングを意識させ数的優位を作り、守備はゴールを守るのではなくボールを奪う意識を持たせる。常に主導権を握ることで琉球の「攻め勝つサッカー」は成り立っている。
 
 そのサッカーを実現させるため、樋口監督は1月の初練習時から常に「距離感」という言葉を選手たちに植え付けている。これはプレー中、選手同士の距離感を保ちながら正確なパス交換とプレスを実現させるという意味合いだけでなく、そういうシーンを作り出す上で重要な信頼関係の構築も含まれている。22人の新戦力が加わった今シーズン。言わずもがな、コミュニケーションの確立は急務であった。
 

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