【浦和】「『ボールをくれ!』と5回は叫んだ」森脇良太の劇的弾を生んだ“信頼”と“執念”

2019年03月30日 多田哲平(サッカーダイジェスト)

単なる勝点1を拾っただけでなく――

後半アディショナルタイムに劇的な同点ゴールを決めた森脇。その積極的な動き出しは素晴らしかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ5節]浦和1-1FC東京/3月30日/埼玉スタジアム2002
 
 75分に先制点を献上したまま、なかなかFC東京の堅牢な守備を崩せず、時間は90分を回った。そんな敗戦濃厚だった浦和を危機から救ったのは、DFの森脇良太だった。
 
 森脇が大仕事を果たしたのは後半アディショナルタイムの90+4分。山中亮輔の足もとにボールが入ったのを見ると、すかさず猛スピードでゴール前に走り込み、示しを合わせたように山中から送られたグラウンダーのクロスに左足で合わせ、劇的な同点ゴールを決めてみせたのだ。
 
「負けていて得点を獲りに行かなきゃいけない状況で、高い位置を取ろうと思っていました。山中選手にボールが渡った時に、彼を信じて、空いたエリアに突っ込もうと。
 
 山中選手が非常に良いところを見てくれていて、空いたエリアにボールを落としてくれた。あとはふかすことなく枠にきっちり決めることだけを意識してシュートを打ちました。8割くらいは山中選手の得点でもおかしくないです、それくらい素晴らしいクロスボールでした」
 

 森脇が言うように、山中のクロスも文句なしのボールだったが、もちろん森脇の動きも素晴らしかった。なにせ4-4-2システムの右SBながら、試合終盤にチャンスと見るや、逆サイドからのクロスに合わせてペナルティエリア内まで走り込んでいたのだ。その果敢な姿勢は称賛されるべきだろう。
 
 その動力源になったのが、クロッサー山中への信頼であり、ゴールへの執念だった。
 
「僕は(山中選手と)目が合ったと思います。山中選手はどうか分からないですけど。目が合ったことに加えて、『本当にボールをくれ』と、あの短い時間で心の中で5回は叫びましたね。そこから素晴らしいボールが来たので、さっき言ったように、あとは枠に決めるだけでした」
 
 攻撃の迫力を欠き停滞感を漂わせていた浦和にとって、森脇の劇的な同点ゴールは、そうした鬱憤を晴らすものだったに違いない。単なる勝点1を拾っただけではなく、今後チームを勢いづかせる意味でも大きなきっかけになるかもしれない。
 
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)
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