【コロンビア戦・10番検証】香川真司が森保Jに持ち込んだ日本の「伝統的長所」。出場前後で崩しの質の違いは明白に…

2019年03月23日 加部 究

香川が攻撃の臍に位置し、香川のタクトでボールが動き出すと、ハイテンポな流れが生まれる

コロンビア戦では65分から途中出場した香川。チームの連動性を引き出し、流動的な攻撃が見られるようになった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 香川真司の最大の特徴は、時間とスペースを限定された局面での解決能力なのだと思う。ユルゲン・クロップ監督が、ドルトムントに加入したばかりの香川をトップ下に据えたのも、相手に最も警戒されるバイタルエリア中央でパスを引き出し、攻撃に味つけをする才に着眼したからだろう。香川は、並の選手なら慌てふためくようなプレッシャーを楽しむかのように溌剌と輝き、ドイツの大男たちを翻弄し続けた。必然的に味方も香川を視野に入れ、ボールを集めるようになった。そしてロシア・ワールドカップでも似たような状況が何度も再現された。スペースが狭まりボール奪取に迫る相手を逆手に取るかのように、香川は落ち着き払って状況を打開した。

 
 ドイツへ渡る前の香川は、むしろサイドからのドリブラーの印象が濃かった。しかしアルベルト・ザッケローニ監督時代に左サイドでの起用が続くと、ドルトムント初期ほどの継続的な輝きは消えた。サイドに回れば余裕が生まれるが、使える時間が増える分だけ、個の仕掛けが必要になる。それでも適度にできてしまうから求められるのかもしれないが、おそらくそれは最大ではなく、次善の特徴なのだと思う。今なら明白だが、さすがに森保一監督も、中島翔哉、堂安律、乾貴士らをベンチに置いても、香川をサイドで使うことはないだろう。
 
 北京五輪で日本代表を指揮した反町康治監督(現・松本山雅)は「ライン間や人と人の間で受けてつなぐ練習を盛んにした」と振り返るが、もしかするとそこが香川の原点なのかもしれない。ライン間や2人のボランチの間、あるいはアンカーの脇などでボールを引き出し、少ないタッチで次のスペースへとボールを呼び込む。そんな状況が増えるほど香川の価値は高まる。そういう意味では、ロシア・ワールドカップや今回のコロンビア戦の香川は、適役を与えられたことになる。
 
 クロップ時代のドルトムントに象徴されるように、香川が攻撃の臍に位置し、香川のタクトでボールが動き出すと、ハイテンポな流れが生まれる。コロンビア戦でも、香川の出場前と後では、そこが明白に違った。前半は2列目の3人が個の力でゴールを脅かしたが、人とボールの流れは滞った。だが香川とともに乾や小林祐希、さらには鎌田大地も加わった終盤は、ポジションも流動化し崩しの質が高まった。
 

次ページ個で仕掛けた堂安や中島に対し、香川や乾は伝統的な日本の長所を表現した

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事