【独占インタビュー】武藤嘉紀 「見失わないスタンス」

2014年09月24日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「ベネズエラ戦の先制点は自分の持ち味が凝縮された一撃」

「宿舎では海外組の選手たちの話に刺激を受けました」と語ったように、文字通り実り多き代表初選出だった。 (C) SOCCER DIGEST

――まずは、ベネズエラ戦の弾丸シュートについて。掛け値なしに、素晴らしいゴールでした。
 
「ドリブルで中に切り込むと決めた瞬間、シュートまでイメージしました。相手選手が飛び込めない位置にボールを運ぶ、そんなコース取りができていたと思います」
 
――大学時代に大怪我した、しかも利き足ではない左足で、あんな強烈なシュートを打てるとは驚きました。
 
「右でも左でも同じレベルで蹴れるようにトレーニングしてきましたが、半月板を傷めた時は左足がだいぶ細くなって、筋力も落ちました。治った後もしばらく強いシュートを打てずに苦しみましたが、ようやく(感覚が)戻ってきた感じです。あの先制弾は、自分の持ち味が凝縮された一撃だったと思います」
 
――自身初の代表活動を、改めて振り返ってください。
 
「濃密な9日間。ピッチ内はもちろん、オフ・ザ・ピッチでも刺激を受けました」
 
――具体的に言うと?
 
「ピッチ内では一人ひとりのクオリティーの高さ、宿舎では海外組の選手たちの話に刺激を受けました」
 
――同じテーブルで食事をしたという本田選手とはどんな会話を?
 
「海外は厳しい反面、そこで揉まれれば自信が付くと言われました。日本では例えば、FC東京のファン・サポーターが僕にブーイングする光景はないですよね。でも、イタリアではそれが普通にあるそうです。良くないプレーを続けると、ボールを持つだけでブーイングされる。そういうのを聞いて、日本はまだ緩いとまでは言いませんが、厳しさでは海外よりも劣っていると感じました」
 
――アギーレ監督の初陣となったウルグアイ戦でも、武藤選手は良いミドル(88分)を打ちました。ただ、気になったのはその前のミス。岡崎選手へのくさびのパスが浮いてしまって、敵に当たったシーンです。
 
「パスに限らず、トラップのミスも多かったですね。ウルグアイ戦で本来の力が出せなかった点についてはさほど気にしていません。経験を積み重ねれば、力は自然と出せるようになると考えているので。避けたいのは、その力に関係のない軽はずみなプレー。日の丸を背負っている代表戦は、国民の皆さんが注目しています。そういう舞台で単純なミスはやはり許されないと思います」
 
――硬さが目に付いたウルグアイ戦とは違って、ベネズエラ戦ではだいぶ緊張がほぐれた印象もありました。実際、どうでした?
 
「いやいや、緊張しましたよ(笑)」
 
――その割には、だいぶ動けていたと思います。ウルグアイ戦よりもベネズエラ戦のほうがプレーに関与できていて、パスを引き出す回数も増えたのでは?
 
「どうですかね。ウルグアイ戦からベネズエラ戦まで時間は限られていましたし、ピッチの上で大きな変化はなかったと思います。代表活動を経て感じたのは、もっと自分を知ってもらう、逆に他の選手の持ち味をより深く理解すればプレーの幅が広がるということです。もちろん、代表チームで連係を深めるのは簡単な作業ではありません。地道に、時間をかけながら各々の関係性を築く必要があります」
 
――連係はともかく、献身的なプレーは目立ちました。ベネズエラ戦では武藤選手の守備が柴崎選手のゴールにつながりましたし、そういう意味で持ち味は出せたのでは?
 
「確かに守備は苦手ではありません。FC東京でもボールを奪われた後の対応は上手くできていると思います。代表ではアギーレ監督に『クラブと同じように攻守両面で動いてくれていい』と言われたので、守備の部分ではクラブと同じスタンスでプレーしようと心がけました」
 
――アギーレ監督からは、他にどんな言葉をかけられましたか?
 
「『真ん中に入った後のサポートを速くしろ』と。ベネズエラ戦では"中央のサポート"から2ゴールに絡めたので、良かったです」

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