【現地発】復調のキーワードは「斬新さより簡潔さ」。“ガリターノ効果”でバスクの雄が蘇る!

2019年02月23日 エル・パイス紙

原点回帰で18位から11位へ。

2月10日のバルサ戦はスコアレスドロー。ポゼッションでは劣ったものの、ビルバオはこの首位チームを上回る数のシュートを放っている。(C)Getty Images

 アスレティック・ビルバオが、監督交代を機に息を吹き返している。

 クラブの上層部がエドゥアルド・ベリッソ監督を解任し、後任にBチームを指揮していたガイスカ・ガリターノを昇格させたのは14節終了後。当時2部降格圏の18位に沈んでいたチームは、以降の10試合で5勝4分け1敗の好成績を収め、24節終了時点で順位を一気に11位にジャンプアップさせている。

 まさに"ガリターノ効果"といえる快進撃だが、その要因のひとつとしてディフェンダーのユーリ・ベルチチェは新指揮官の「メッセージの簡潔さ」に着目する。

「ガリターノの指示は明確だった。しっかり守備ブロックを作って、ビルドアップではリスクを冒さず、ためらわずにダイレクトに攻める。この3点だけだ」

 ベリッソ監督時代のビルバオは、指揮官が標榜するマンマークをベースとした守備戦術の影響で、すべての選手に極限の集中力と激しい運動量が課されていた。この戦い方の難点は、90分間継続するのが非常に困難なこと。インテンシティーの低下に伴って攻守のバランスが破綻し、追い込まれた守備陣がミスを連発して失点を重ねた。
 
 ガリターノ監督の就任後、そうしたチーム体質の改善の一環として重点的に取り組んだのが、サイド攻撃と守備の強化だった。

 サイド攻撃については、ユーリとイニゴ・コルドバ、アンデル・カパとオスカル・デ・マルコスをそれぞれ左右に配置。キーマンのイケル・ムニアインは、本人が「好きなポジション」と認めるトップ下に配し、自由とスペースを与えた。

 一方、守備についてはDFの要、イニゴ・マルティネスの次の言葉が指揮官の狙いを明確に代弁している。

「ガイスカが監督に就いてからは、周囲のサポートを多く得られるようになった。守備がコンパクトになったことで、カバーリングがスムーズに行なえるようになったんだ。ベリッソの時はひとりでも守備を怠れば、一気にチーム全体のバランスが崩れていたけど、いまはそうした混乱はなくなった。前線へ攻め上がっても、背後をカバーする選手がつねにいてくれるという安心感がある」

 斬新な戦術を提唱したベリッソ前監督に対し、ガリターノ新監督が掲げるのは簡潔さ。どちらが正解というわけではないが、原点回帰がチームにとっても選手にとってもプラスに作用している。

文●ホン・リバス(エル・パイス紙/バスク州のクラブ担当記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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