「プラチナの輝き」と「インサイドハーフの不十分」 【週刊サッカーダイジェスト編集長】がアギーレ新体制を考察

2014年09月10日 谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)

武藤と柴崎のゴールは「世代」全体を活性化するきっかけにも。

武藤(14)と柴崎という、いわゆる「プラチナ世代」の活躍は収穫。一方、とくにインサイドハーフなど人選の見直しが必要だろう。 (C) SOCCER DIGEST

 実に爽快な2ゴール――。しかも近年の日本代表ではあまりお目にかかれなかった、ハビエル・アギーレ監督の哲学が反映されたダイナミックさとスピードに溢れた形で崩したところに、ベネズエラ戦のゴールの価値はある。
 
 1点目は自陣右サイドの深い位置から前線に大きく蹴り出したボールを岡崎慎司が競り合い、相手DFのクリアをハーフライン付近で拾った武藤嘉紀がドリブルで切り込み、最後は豪快に左足を振り抜いて決めたもの。
 
 2点目も自陣左サイドの深い位置でのクリアを武藤と柴崎岳が1タッチ、2タッチの素早いパス交換で突き進み、左サイドの岡崎へ展開。岡崎はドリブルで縦に突っかけると、左足で中央にクロスを送り、一連の攻撃の起点となった柴崎が走り込み右足のボレーで叩き込んだ。
 
 ともにボールを奪ってから手数と時間をかけずに相手ゴールへ迫ったダイレクトプレーのお手本のような展開で、ベネズエラの守備陣形が乱れていた隙を突く鋭利なカウンターアタックだった。
 
 そしてゴールという結果を残したふたりが、1992年生まれの「プラチナ世代」だったことも、日本サッカー界にとって大きな意味を持つ。
 
 宇佐美貴史(G大阪)や宮市亮(トゥベンテ)に代表されるこの世代は、特に攻撃陣に多くの好タレントを擁し、早くから将来を嘱望されていた世代だ。しかし、2011年のU-20ワールドカップ出場を逃し、2012年のロンドン五輪に出場したチーム(1989年から1992年生まれの選手とオーバーエイジ2選手で構成)では、最年少世代だったこともあり、メンバー入りを果たしたのは宇佐美と杉本健勇(C大阪)のふたりのみで、いずれも本大会では控えに。そして昨年のブラジル・ワールドカップに臨んだ23人のリストには、ひとりも入らなかった。
 
 国際舞台で輝けないプラチナ世代――だが、4年後に25歳から26歳となる彼らは、間違いなくロシア・ワールドカップで中核を担うべき人材である。プロ入り後も鹿島で着実にキャリアを積み重ねた柴崎と、大学経由でA代表に上り詰めた武藤。対照的な道を歩みながら、ともにベネズエラ戦のピッチに立ち、「一番重要なのは、新しく代表に来た選手が良いプレーをし、結果を残したこと」とアギーレ監督に言わしめたふたりの代表初ゴールは、今後、世代全体を活性化するきっかけになるかもしれない。

次ページアジアカップを見据えると、興味深い人材は――。

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