【岩政大樹】素晴らしかった「試合の勝ち方」と物足りなかった「サッカーのやり方」

2019年01月22日 岩政大樹

6バックのようになった日本は、中盤でプレッシャーをかけるのが難しくなった

両サイドハーフの堂安(21番)と原口が下がって守ったことで、日本は6バックのようになっていた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 サウジアラビアを下し、ベスト8進出。苦しい試合を勝ち切る強さを示したものの、展開は予想よりもさらに苦しいものでした。

 日本代表は決して自陣でサッカーをしようとして試合に入ったわけではなかったと思います。押し返すための方法を模索しながら試合を進めていったものの、"結果的に"守り倒す試合となりました。「試合の勝ち方」としては成熟したチームのそれでしたが、「サッカーのやり方」としては物足りなかったと言われても致し方ありません。

 立ち上がりから押し込まれる展開となりました。グループリーグ第3戦もあまりメンバーを入れ替えずに戦ったサウジアラビアの選手たちの方が、試合のリズムに対する感覚が鋭く残っていたのかもしれません。セカンドボールやルーズボールの反応で後れを取った日本は、守備のスタートが自陣からになるために、なかなか狙い通りの形を作れていないように見えました。本来であれば、相手のビルドアップに対して早めに2トップでチェックに行き、相手センターバックやキーパーに蹴らせる場面を増やしたかったはずです。

 狙いとする守備の形が作れない日本に対し、サウジアラビアは両サイドバックを高い位置に押し出し、サイドいっぱいに幅を取ってきます。また、後ろにふたりのセンターバックとひとりのボランチの3人を残し、中央の高い位置には5人もの攻撃的な選手を配してきました。
 
 これに対する日本の対応の仕方は、大きく分けて二通りありました。ひとつは、相手のサイドバックに原口選手、堂安選手の両サイドハーフがついていく方法。もうひとつは、ついていかずに全体でスライドして対応する方法です。日本は前者を選択したので6バックのようになりました。これでは中盤でプレッシャーをかけるのは難しく、全体が下がるのは必然でした。
 
 日本としては、それでももう少しボールを刈り取れると思っていたはずです。加えて、センターフォワードの19番(ファハド)のスピードを警戒して、ディフェンスラインにスペースを空けたくなかったために、下がる選択をしたのでしょう。
 
 ただ、このやり方では、相手を誘導して囲い込むよりも受ける形となります。そうなると、サウジアラビアのような技術力のあるチームから、ボールを意図して奪うのは難しくなりますが、狙っていたセットプレーで得点を取れてしまったために、"受ける"意識に拍車をかけたとも言えました。

次ページ”未来”を見ると「これでいいのか」という思いが拭えない

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