韓国のエース、ソン・フンミンを超える逸材も!? アジア杯で台頭した衝撃のライバルたち

2019年01月18日 加部 究

どんなレベルの大会でも出場枠が増えると底上げ現象が起こる

日本戦で先制点を挙げたショムロドフ(左)とサウジアラビアから2ゴールを奪ったカタールのアルモエズ・アリ(右)。今後、日本にとってやっかいな敵となりそうだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)/Getty Images

 トーナメント(大会)が広く認知され、出場国が増えると底上げ現象が起こる。これはどのレベルでも変わらない。

 ワールドカップも出場枠の拡大に伴い、逆に大陸間格差が解消されワンサイドの試合が減った。例えば、16か国で争われた1974年西ドイツ大会に唯一のアフリカ代表として出場したザイール(現コンゴ)は、グループリーグで絶望的なレベルの違いを思い知らされた。逆に他の3か国同士の対戦はすべて引き分けたため、ザイールから奪ったゴール数で{①ユーゴスラビア9点②ブラジル3点③スコットランド2点}順位が決まった。しかし最近では、逆にドイツ-ブラジル(2014年準決勝/7-1)のような屈指の大国同士の対戦で大きくスコアが動いている。EUROも枠が拡大し、前回2016年大会ではアイスランド、ウェールズなどが新たに旋風を巻き起こした。日本の高校選手権も各都道府県の代表が出揃うようになってから地域格差が消え、むしろPK戦が目立つ1~2回戦より、無茶なスケジュールの影響を受ける決勝戦の方が点差が開く傾向が目につくようになった。

 こうした傾向を踏まえれば、アジアカップの出場国枠が広がるのは喜ばしいことだ。かつて北中米大陸はメキシコの独壇場だったが、逆にそんな時代は世界に出ると太刀打ちできなかった。1978年アルゼンチン・ワールドカップで北中米の出場枠は1か国しかなく、大陸代表として本大会に進んだメキシコは、グループリーグでチュニジア、西ドイツ、ポーランドを相手に3戦全敗、得点2・失点12で失意の帰国となった。だが米国を筆頭に、コスタリカなど世界に出ても戦えるライバルが登場して来ると、盟主メキシコの国際舞台での成績も安定するようになった。さらに欧州が大陸内でリーグ戦を整備し、他大陸との交流が激減する傾向などを考えても、日本が常に試合を重ねていかなければならないアジア内の国々のレベルアップは、自国強化の重要なポイントになる。
 
 今回のアジアカップで新興勢力という意味で最もインパクトを与えたのは、フィリピンとインドだろう。インドの方は、なんと1956年メルボルン五輪4位の実績があるので、古豪復活と表現するべきかもしれないが、スーパーリーグもできて躍進の兆しが見える。一方フィリピンはアマチュア時代に日本が最も「お得意さん」にしてきた国だ。日本が銅メダルを獲得したメキシコ五輪予選のスコアは15-0。大勝予告の韓国には5点差で粘ってくれたことが、日本の本大会出場につながった。それが今ではヨーロッパ育ちの選手たちを並べ、スベン・ゴラン・エリクソンを監督に招聘して韓国に1点差と肉薄。アジアでも楽に勝てる国が減ってきたことを印象づけた。
 

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