【選手権】高校サッカー界の新トレンド!? 躍進2校の意外な「共通点」

2019年01月15日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

雪国のハンデをカバーするために…。

ともにベスト8で散ったとはいえ、帝京長岡(上)と矢板中央(下)の戦いぶりは称賛に値する。写真:金子拓弥

 青森山田の二度目の全国制覇で幕を閉じた第97回全国高校サッカー選手権。ともにベスト8で散ったとはいえ、小気味良いパスサッカーを披露した帝京長岡と、粘り強い堅守を武器に準々決勝でその青森山田と熱戦を演じた矢板中央の戦いぶりは、好印象を与えた。

 この一見対照的な両チームには、ある共通点がある。トレーニングにフットサルを取り入れているのだ。

 帝京長岡のエース晴山岬(2年)が、「うちのようにフットサル的な攻撃をするチームは珍しいと思う」と語ったように、敵のゴール前でもパスワークで崩そうとするスタイル、それを可能にする個々のテクニックと連動性は、フットサルで養った。

 帝京長岡のある新潟県長岡市は日本有数の豪雪地帯で、冬はグラウンドが使えない時期が長い。そのハンデをカバーするための工夫が、体育館でのフットサルだった。晴山やキャプテンのDF小泉善人(3年)らメンバーの約半数が中学時代に所属していた『長岡JrユースFC』でも、冬季はフットサルを行なっていたという。
 
 その経験が実ったのが、2018年夏に行なわれた全日本ユース(U-18)フットサル選手権だ。晴山、小泉、MF谷内田哲平(2年)らレギュラー組がチームを組んで出場し、見事に優勝を飾ったのだ。晴山は大会MVPにも輝いた。
 
 171センチと大柄ではないにもかかわらず、晴山が敵のDFを背負いながらワンタッチで味方に落とすポストプレーを得意としているのは、フットサルでピボ(FW的な役割のポジション)を務めた経験が活かされているという。
 
 また、帝京長岡の古沢徹監督は、フットサルで全国優勝を経験したことで、「精神的に逞しくなった」とも語っている。
 
 そして、帝京長岡が全国制覇を成し遂げたちょうど1年前に、同じ大会でフットサル日本一に輝いたのが矢板中央だ。
 
「試合に出られない下級生に経験を積ませたい」という髙橋健二監督のアイデアで、2年生を中心にチームを編成。ほぼ全員がフットサルの経験がなかったにもかかわらず、予選を突破すると、本大会でも快進撃を続け、あれよあれよと栄冠に輝いた。

 大会記録となる19ゴールを挙げ得点王に輝いた大塚尋斗をはじめ、MFの飯島翼と板橋幸大ら当時の2年生がフットサルを通して成長。1年前の選手権ベスト4、今大会のベスト8という躍進の担い手となった。
 
 いまではフットサルのU-19日本代表に選出されている大塚は、「球際の激しさや狭いスペースでのボールキープなど、フットサルの経験がサッカーにも活かされている」と話す。
 
 帝京長岡は足下のテクニック、矢板中央は切り替えの速さやインテンシティーの高さ。フットサルの経験が、チームの武器をさらに磨き上げるのに繋がったのは間違いない。今後、フットサルを練習に取り入れるチームが増えていくかもしれない。
 
取材・文●江國森(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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