最後の選手権直前に初めてレギュラーに! 立正大淞南CBが駆け抜けた夢の「240分間」

2019年01月04日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

矢板中央戦は「公式戦4試合目」だった

大会直前にCBにコンバートされ、立正大淞南の堅牢を支えた谷口。高校生活の最終盤で“出番”が巡ってきた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[高校選手権・3回戦]立正大淞南 0-1 矢板中央/1月3日/等々力
 
 圧倒的にボールを支配して敵陣深くに攻め入ったが、最後までゴールは遠かった。立正大淞南の快進撃は、ラウンド・オブ16で終わりを告げた。

 チームを率いる南健司監督が、今大会を戦ううえで最終ラインに抜擢登用した3年生がいる。主将の山田祐樹と守備中央でコンビを組み、3試合をわずか2失点に抑えた立役者のひとり、谷口歩夢だ。全国大会出場は今回の選手権が初めてで、しかも矢板中央戦はセンターバックにコンバートされてから迎えた公式戦4試合目。最終学年の終盤になって、初めてレギュラーの座を射止めた"遅咲き"である。

 ファジアーノ岡山U-15出身の谷口は、もともとは中盤の選手だ。だが中国地方屈指の分厚い選手層を誇る立正大淞南にあって、なかなかトップチームでは出場機会を得られなかった。選手本人はこう振り返る。

「中学時代、とくに取柄もなくて足も速いほうではなかった。攻撃的な中盤のポジションだけじゃなく、ディフェンシブもワイドもやれないとダメだと思っていたし、なにより守備を磨かないと試合には出られないと感じていました。守備から入れば、きっと攻撃も上手くいくはずだと。自分の特長は正確にパスを繋げるところなんですが、それだけはどの位置でプレーしても持ち味として出せる自信があった。ずっとコツコツ地道に3年間やってきて、最後の選手権でセンターバックで出させてもらえた。やってきたことが間違いじゃなかったんだって、いまはそう思えます」

 選手権の島根県予選で出番は巡ってこなかったが、プリンスリーグ中国の終盤戦でボランチのバックアッパーとして起用され、ついに南監督の信頼を得た。プレミアリーグ参入戦でセンターバックとしてスタメンを張り、選手権を目前に控えたタイミングで定位置を確保したのだ。努力が報われた瞬間だった。

「先生(監督)からは、思い切って自分の得意なところを出し続けろと言ってもらいました。さすがにセンターバックで出られるとは思っていなかったですが、選手権でいつかプレーしたいとずっとイメージしていましたし、練習でも練習試合でも、いつでもずっと夢見ていました。だからそれが実現できて、ただただ嬉しかったです」

 チームは1回戦の岐阜工戦を4-0で突破すると、2回戦の那覇西戦でも6-1の圧勝を収めた。南監督は「ゴールがたくさん入ると前線の選手に目が行きがちですが、それもチーム全体が機能しているからこそ引き出せるもの」と話し、そのなかで、冷静沈着な守備対応が光る谷口を「まだ公式戦で3試合目ですよ。本当に大したものだと思います」と称えた。際立っていたのは鋭い読みからのインターセプトであり、自身も持ち味と捉えるビルドアップでの高い貢献度。山田との連携も、急造コンビとは思えないほどスムーズだった。

「大会中、山田やディフェンスのみんなと話していました。絶対に後ろが我慢して無失点で抑えよう、そうすれば、攻撃陣が点を取ってくれるからと。集中して粘ろうと、試合中も声を掛け合っていましたね。淞南は攻撃的なサッカーで、相手の陣地でどんどん仕掛けていく。だから僕たちは、カウンターをしっかり警戒しないといけない。先生からも、立って待たずにカバーと前に出る意識を持つようにと言われていて、そこはできていたのかなと思います」

 それでも、矢板中央戦の失点シーンが頭から離れない。開始1分、谷口は目の前で、相手DF白井陽貴にバックヒールでゴールを決められたのだ。「速いボールが来たので足が止まってしまったんです。僕が止めれたかなと思うと、やはり悔しいですね」と唇を噛んだ。

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