【選手権】これは「奇跡」ではない!秋商、32大会ぶりの8強を実現した地道な努力の歩み

2019年01月03日 小林健志

13大会連続で初戦敗退が続いていた秋田勢。県内のタレントも流出する事態に…

秋田商の山本が土壇場で同点弾をゲット。勝負をPK戦に持ち込み、これを4-2で制した。写真:田中研治

[高校選手権・2回戦]秋田商1(4PK2)1龍谷/1月3日/フクアリ
 
 秋田商が32大会ぶりの選手権全国ベスト8入りを果たした。3回戦・龍谷戦は前半17分にセットプレーから失点するも、後半途中の交代策を契機に流れを引き寄せ、本来のパスワークが蘇り、決定機を作れるようになった。あと一歩でゴールが奪えなかったが、後半40分、MF長谷川悠(3年)のコーナーキックからニアにいたDF山本翔太(3年)がヘディングシュートを決め、劇的な形で同点に追いつき、最後はPK戦を制してベスト8入り。選手もスタッフも喜びを爆発させた。
 
 秋田県勢は13大会連続で初戦敗退が続いていた。その間秋田商も一時は全国大会に全く出られない時期を経験し、苦しみ続けた。2013年から5年間、プリンスリーグ東北に秋田県勢がおらず、県全体がレベルアップしづらい状況となり、モンテディオ山形GKの摂津颯登(モンテディオ山形ユース出身)など秋田県出身で優秀な選手は高校年代で県外に流出していた。
 
 2014年に就任した小林克監督はこの状況を変えるため地道な努力を続けた。
「一気に2段階3段階とは跳べません。たまたま選手権に4回連続出場させていただき、過去の3年生が脈々と引き継いでいったものがあります。こういう大会を通じて全国のチームと肌でぶつかり合う中で本物の技術を体感できるのは財産になります」
 
 選手権出場を続け、初戦敗退は続いていたが、少しずつ善戦できるようになり、力をつけていった。
 
 そんな中で磨いたのはパスワークだった。
「秋田商は98年目でもうすぐ100周年を迎えます。歴史と伝統があるので変わってはいけないものがあります。そこにプラスアルファで何か身につけられたらと思っていました。『赤い壁』と言われた激しく行く守備、諦めずにやるという部分はなくしてはいけません。そうした『走る・蹴る・当たる』をやりながら、ボールをつなぐ、判断力と決断力を高めていくと良いサッカーになります」と小林監督は思ったという。
 
 この試合も前半こそロングボールが多くなったが、後半からは選手の距離を縮め、細かいパスワークで決定機をつくった。
「(後半入った選手は)個人の力を発揮できたので、そこもチームとしての成長だと思います」
 これまで培ってきた高い技術を駆使して、流れを引き寄せたことが劇的勝利につながった。

次ページ全国で勝ちたいという選手が集まり、練習環境も大幅に向上。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事