【選手権】青森山田が大勝発進。先制ゴールの天笠泰輝の手に滲んだ「171」の意味

2019年01月03日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

ビルドアップや中盤の守備にも大きく貢献

鮮やかな先制ゴールを決めた天笠(6番)が、中盤の底でコンビを組んだ澤田(15番)とスタンドの声援に応えた。写真:早草紀子

[高校選手権・2回戦]青森山田6-0草津東/1月2日/三ツ沢
 
 優勝候補の一角、青森山田が2回戦で滋賀の草津東に6-0と完勝した。幸先の良いスタートを切った前々回王者のなかで、一際存在感を発揮したのがMF天笠泰輝(3年)だ。
 
 立ち上がりはやや堅さの見られた青森山田だったが、前半13分、その天笠のミドルシュートで均衡を破る。右サイドのバスケス・バイロン(3年)が中央で待つ1トップの佐々木銀士(3年)にパスを出し、その落としをダイレクトで豪快に蹴り込んだ。「練習通りだった」(天笠)という鮮やかなミドルシュートだった。
 
 これで堅さの取れた東北の雄はその後、怒涛のゴールラッシュを見せた。試合後、青森山田の黒田剛監督が「1点目が入って落ち着いた」と語ったように、まさに勝負のあやとなった先制点だった。
 
 貴重なゴールを奪った天笠は、予選ではアンカーを務めることが多かったが、この日は守備を得意とする澤田貴史(3年)とダブルボランチを組んだ。
 
 これは、「シュートやパスが正確な天笠が攻撃に絡みやすいように」という狙いの下で行なわれた配置転換で、先制ゴールはまさに黒田監督の采配がズバリと当たった格好となった。
 
 その他の場面でも、天笠は1対1での粘り強い守備や、最終ラインに下りきての正確なビルドアップなど、攻守に渡り獅子奮迅のプレーを披露。J1札幌入りが内定しているアタッカーの檀崎竜孔、J2福岡入りが内定しているCBの三國ケネディエブスらが注目を集めるなか、彼らにひけを取らないプレーでチームを牽引した。
 

 ただ、攻守に走り回った影響からか、終盤には「足を攣って思うようなプレーが出来なかった」という。そんな時に「パワーになった」のが、左手にマジックで書き込んだ、ある数字だった。
 
 試合後、左の掌を見せてもらうとマジックで書きこんだ「171」という数字が汗で滲んでいた。これは青森山田高校サッカー部の部員数を表わしたもので、試合前に自身で書きこんだのだという。
 
「ベンチに入れない選手も含め、部員全員の気持ちを背負ってプレーした。3年間でこういうことは初めてやった」
 
 ひょっとすると鮮やかなミドルシュートは、171人の部員全員の気持ちが乗り移ったものだったのかもしれない。それだけ美しいゴールだった。
 
 ただ、この日の勝利の立役者はゴールの余韻に浸ることもなく、「優勝するためにはまずは、明日勝たなければいけないので」とすぐに翌日の大津戦に気持ちを切り替えた。
 
 攻守を司る天笠の活躍こそが、二度目の選手権制覇を目指す青森山田にとっての大きな鍵となりそうだ。
 
取材・文●村田朋晃(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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