【選手権】規格外のニューヒーロー!! ガーナの血を引く矢板中央の長身ストライカーが大暴れ!

2019年01月02日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

中学時代はベンチを温めていた。

待望の選手権初ゴールを挙げた望月。空中戦では圧倒的な強さを見せた。写真:早草紀子

[選手権2回戦]日章学園1-2矢板中央/1月2日/三ツ沢
 
 どでかいニューヒーローの誕生だ。
 
 矢板中央の初戦突破の立役者となったFW望月謙(3年)だ。
 
 前半20分だった。左SB内田航太郎(3年)が送り込んだクロスに飛び込んだFW伊藤恵亮(3年)が敵DFと交錯すると、こぼれ球が足下へ。「来ると思っていた」と落ち着いてボールを収めて右足を振り抜き、先制点を叩き出す。
 
 後半16分には、するするとドリブルで持ち上がると、対峙した敵DF2枚を振り切ってエリア内に侵入。後ろから倒されてPKを獲得し、貴重な追加点をもたらした。
 
 2点に絡んだだけではない。前回大会の準決勝で対戦した流経大柏のCB関川郁万(鹿島入団内定)に「まったく勝てなかった」と言わしめた、得意のエアバトルでもことごとく勝利。文字通り圧倒的な存在感を発揮した。
 
 試合後、髙橋健二監督はPKを得たシーンを振り返り、「あんなプレーができるなんて」と驚きを隠せず。コンディションが万全ではなく先発を外れたエース大塚尋斗の穴を埋めて余りある活躍を見せた望月を、「大爆発でしたね」と褒め称えた。
 
 ガーナ人の父と日本人の母を持つ自称191センチ(登録は190センチ)の長身ストライカーは、中学時代に所属した埼玉ユナイテッドフェスタではベンチを温めていた。
 
 だが、その才能に惚れ込んだ金子文三コーチからスカウトされ、「環境が整っていたから」と矢板中央への進学を決意。「とても全国のピッチに立てるような選手ではなかった」と当時を振り返る。
 
 その金子コーチから、「お前はプロになれる素質がある」と叱咤激励されて練習に励み、レギュラー格として出場した前回大会は、全4試合に先発するもノーゴール。チームはベスト4に進んだものの、2試合はハーフタイム、残り2試合は前半途中にベンチに下げられ、「悔しさしか残っていない」という。
 
 この1年で成長したのは精神面だ。県大会ではゴールを奪えても、全国の舞台では萎縮してしまうケースが多かったため、コーチに相談して、ポジティブな心持ちでゲームに臨むように「メンタル改革」を施した。試合前の集中力も高まったという。
 
 この日の先制点は、「こぼれ球が自分のところに来ると、ポジティブ思考で準備していたお陰だと思う」と回想した。
 
 卒業後は日体大に進む。将来の夢は「プロになって世界で活躍すること」だ。
 
 最後に「ガーナ代表と日本代表ならどちらを選ぶか」と訊くと、こう返ってきた。
 
「もちろん日本です。ずっと日本で育ってきましたから」
 
 計り知れないポテンシャルを持った規格外のストライカーから、目が離せない。
 
取材・文●江國森(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
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