大津が誇る規格外のストライカー!大崎舜の才能が花開きつつある

2019年01月01日 川端暁彦

緊張の初戦で桐光学園から先制点!

高さと速さを兼ね備えたストライカー。大崎の能力に疑いの余地はない。写真:早草紀子

「本当にすごい"モノ"を持っているんだ」
 
 大津高の平岡和徳総監督がそう力説してくれたのは、今から2年前のことだった。視線の先にいたのは当時1年生のFW大崎舜。180センチを軽く超える高さと抜群のスピード。指導者が逆立ちしても教えられない「モノ」を持った素材なのは間違いなかった。
 
 ただ、当時の平岡総監督が「きっと時間はかかると思うから、辛抱強く育てていきたい」と語っていたように、圧倒的な身体特性がありながら、技術的にも戦術的にも洗練された選手ではなかった。高さという個性を持ちながら、ヘディングも決して上手い選手ではなかった。
 
 この逸材を、チームはまさに辛抱強く起用し、愚直なまでの練習も重ねてきた。「選手のストロングを育てるのが趣味」と語る平岡総監督は、大崎の「高さ」というストロングを活かすため、時には平岡総監督自ら球出しもしてヘディング練習に励むこともあった。
 
 1回戦のビッグカードとなった桐光学園との試合は、まさにそうした3年間の積み重ねが現れるものとなった。開始5分、最初に訪れたビッグチャンスはスローインの流れで、左サイドから放り込まれたハイボール。ニアで相手DF望月駿介の前に入った大崎は、ほぼ助走なしでのジャンプからキッチリと頭でボールを捉える。
 
 シュートの前にゴールの位置を見る余裕はなかったが、感覚的に場所もつかめていた。「ニアハイを狙った」というイメージ通りの弾道は、まさに「クロスが頭に合うようになってきた」という地道な練習の賜物。身長とジャンプ力という神様からの贈り物と、積み上げてきたものが組み合わさったゴールだった。
 
 続く前半10分の2点目も大崎の個性から生まれたゴールだった。自慢の快足を飛ばして桐光陣内を縦へと貫くと、「マイナスのボールは練習していたので」というラストパス。これは「奥の大竹の位置も見えていた」という冷静な判断からのお膳立てで、大竹の決定的な2点目を演出してみせた。
 
 夏のインターハイでは体力面の不安もあり、スーパーサブ起用。そのなかでも存在感を示してきたが、夏休み明けからは主軸FWとしての信頼を受けるなかで、責任感も変わり、「シュートも枠に行くようになってきた」と自分自身で確かな変化と進化を感じている。
 
「ポテンシャルは間違いない」。幾多のプロ選手を育ててきた名伯楽・平岡総監督が太鼓判を押し続けていた未完の大器が、高校サッカー生活のラストバトルにおいて大きく花開きつつある。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)
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