【選手権】早くも今大会ベストゴール!? 超絶ボレーを叩き込んだ大分の“和製ジルー”が必見!

2018年12月31日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

それでも最大の持ち味は「献身的なポストワーク」

立ち上がりの7分、大分は谷川(9番)のスーパーボレーで先制点を挙げる。これで勢いに乗り、東邦との1回戦を3-1でモノにした。写真:滝川敏之

 今年の等々力会場は、圧巻の幕開けとなった。

 高校選手権1回戦、東邦vs大分の一戦は、前半7分にいきなり均衡が破れる。大分は右サイドのスローインからMF菊地がクロスを上げ、中央のFW谷川へ。背番号9はマーカーを背負いながら高速ターンで鮮やかに振り向くと、浮き球をそのままハーフボーレーで豪快にインパクト! これが右ポストをかすめてゴールへ吸い込まれた。相手GKが一歩も動けないゴラッソだ。

 試合はこの谷川の先制点で優位に試合を進めた大分が、3-1で快勝。小野監督は「課題だった後半立ち上がりと終了間際の時間帯に引き締められた。谷川のゴールは……練習でもあんなの見たことないですね」と笑みを浮かべた。殊勲弾を挙げたFWは「振り向きざまに行こうと思ったけど、トラップが少し乱れてちょっと浮いてしまった。それでも左で撃てると思ったんで振り抜きました」と回顧する。

 ド派手な一撃で観衆を沸かせたストライカーだが、スタンスは超が付くほど謙虚だ。フォア・ザ・チームの意識がすこぶる高い。

 大分予選5試合で28得点を奪ったチームにあって、自身は3得点に終わった。それでも「自分が起点になって点を取れていたからいいと考えていた。サイドや中盤の3枚の選手がいい形で取れていましたから」と意に介さず。何度も繰り返したのは"起点"という言葉で、基準点としての献身がチームの勝利に繋がると信じて疑わない。理想としているのは、チェルシー所属のフランス代表FW、オリビエ・ジルーだという。「自分が起点になって攻撃にリズムを生んで、アシストもゴールも決めるところが凄い」と語り、目を輝かせる。

 チーム最大の武器はパスワークだ。附属の大分中時代からコンビネーションに磨きをかけてきた。谷川は「自慢はパスワーク。本当にパスワークの練習しかしていなかったくらいです(笑)。縦にボールを入れたらどこにサポートが来るかがすべて分かる。やりやすいんですよ」と自信を口にする。

 1年時に出場した2年前の選手権は、なにもできないまま終わり、チームは2回戦で敗退した。「悔しさは人一倍あります」と語り、「今回はチームとしてベスト4を目標に臨んでいる」と豪語する。同校が初めて選手権4強に食い込んだのが、いまから7年前の2011年大会。当時小学生だった谷川はその快進撃とパフォーマンスに憧れ、いつかは自分もと夢見てきた。「次(2回戦の相手)は大津。センターバックのふたりにパワーがあって、そこが強みなんで、自分が起点になって攻撃のリズムを作りたい。そうすれば試合を優位に進められると思います」と意気込む。

 破壊力満点で献身的な背番号9。桐光学園を破って波に乗る大津の最終ラインも、この男にはきっと手を焼くはずだ。

取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
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