【横浜】ハマった前線からのハイプレス。好調の川崎に対して抜群に相性が良い理由

2014年08月24日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

攻撃的な川崎のスタイルには、横浜の良さが出やすい!?

首位を狙った川崎を無失点に封じての勝利を掴んだ横浜。順位は10位に浮上した。 (C) SOCCER DIGEST

 戦前の下馬評では、川崎有利だったに違いない。
 
 20節の時点で、川崎の総得点38はリーグトップタイで、順位も2位。他会場の結果次第では首位に立つチャンスもあったアウェーチームに対し、ホームの横浜は中位に低迷。3日前の天皇杯3回戦では、横浜と川崎ともに敗れてはいるものの、川崎は90分で決着がついた一方、横浜は延長まで戦っていただけに疲労面でも不安視されていた。
 
 しかし、勝点3を掴んだのは横浜のほうだった。相手を終始、圧倒したわけではなかったが、シュート数でも決定機の数でも川崎を上回り、ラフィーニャの先制点と兵藤慎剛の追加点で2-0の完封勝利を収めてみせた。
 
 5月の前回対戦でも、横浜は川崎に3-0と圧勝している。今季は優勝争いを演じるなど好調をキープする川崎に、なぜ横浜は強いのか――。そんな疑問にボランチの中町公祐はこう語る。
 
「スタイル(の噛み合わせ)じゃないですかね。フロンターレはつないできて、攻撃的なんだけど、それに対してはうちの良さが出やすいと思うんです」
 
 最終ラインの強固さもありながら、横浜は前線からの連動したハイプレスも得意としている。つまり、手数をかけて攻めてくる川崎は、横浜にとっては「ボールの奪いどころ」が多いのだろう。
「そうなってくれば、マリノスの選手は個の力で負けるわけにはいかないので」(中町)
 
 相手のボールホルダーを素早く囲い込んで奪い取る。パスの受け手に狙いを定め、鋭い出足でインターセプトするシーンも数多く見られた。
 
 もちろん、川崎のテンポの良いパスワークに後手を踏む場面がなかったわけではない。横浜の高い位置から精力的に奪いに行くやり方も、川崎からすれば相手が食いついてきている証拠であり、プレスを外せばチャンスにつながる可能性を高められる。
 
 もっとも、そうした事態にも横浜は準備を怠らず、2ボランチの中町と小椋祥平はお互いの位置を確認し合いながらギャップを作らないようにし、「ボランチが出た後、真ん中をケアしてくれた」(中町)という藤本淳吾の献身さもあり、中盤で相手が自由に使えるスペースを与えないよう、コンパクトな陣形を保つことができていた。
 中盤の攻防での優位性は、CBの栗原勇蔵も評価している。
「ディフェンスが良くて無失点に抑えているというより、中盤や前線が頑張ってくれた。(大久保)嘉人さんもどこか窮屈そうで、中盤に下がったりしていて、嘉人さんが点を取っている時はゴール前までボールが運ばれてきているからだと思うけど、そこまで来ないってことは、うちの中盤や前線が勝っている証拠じゃないかな」
 
 相性の良さについては、栗原は独特の表現で手応えを語る。
「他の試合でどうやってあれだけ大量得点しているのかと不思議に思えてしまうぐらい、ここ数試合、川崎はうちに対してやり辛そうにしている」
 
 万全なスカウティングの下、川崎の個々の能力の高さには最後まで警戒を緩めず、「『人』につけばあまり上手く回せていない」(栗原)との分析もあり、相手のコンビネーションプレーに狂いを生じさせた。個に対するプレッシャーの意識の強さは、中町の「個の力で負けるわけにはいかない」というコメントに通じるものがある。
 
 勝つべくして勝った――そう断言してもいいほど、横浜の戦いぶりはパーフェクトに近く、快心の勝利だったのは間違いないだろう。

取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)
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