宇佐美も苦悩する昇格クラブの厳しい現実…デュッセルドルフはその戦い方に自信と希望を見出せるか? 【現地発】

2018年12月15日 中野吉之伴

“動かされている”のと“動いている”の違い

プレー時間の大部分は守備に割かれる状況で、宇佐美の良さが出づらいのは事実。しかし、現状を受け入れ、これを打破するしかない。11節ヘルタ・ベルリン戦でのような見事なゴールで攻撃面でも貢献できるか!? (C) Getty Images

 雨のヴェーザー・シュターディオンでは、ブレーメン・ファンが久しぶりに勝利の喜びを分かち合った。ブンデスリーガ第14節でデュッセルドルフを3-1で下し、5試合ぶりの勝利を挙げたのだ。

 お祝い事は、それだけではない。期待の18歳の新鋭、ジョシュア・サージェントが待望のデビューを飾ると、プロファーストタッチがプロファーストゴール! 劇的なドラマに、みんなの笑顔が綻んだ。

 試合終盤、ブレーメン・ファンはスタンディングオベーションで歌い出す。

 目の前に座っていた男性ファンは、2点リードの展開に安心したのか、席に腰を下ろしたままだった。する、隣席の奥さんと思しき人物がその男性の肘を持ち、耳元に口を持っていくと、笑いながら「ここスタジアムよ! あなた、何やってんの!?」と叱り出した。

 旦那さんは苦笑い。そして軽く手を動かし、「ごめん、ごめん」と謝ると、すっと立ち上がって、大声でピッチの選手にエールを送る。そこに奥さんの声が続く。

 そんな声が重なり合い、スタジアムがブレーメンを讃える空間となる。選手は、他人ではない。彼らは「私たち」であり、私たちは「彼ら」なのだ。それがクラブを愛し、応援するということなのだろう。

 一方のデュッセルドルフにとっては、苦しい試合になった。前半は守備が全くはまらず、ブレーメンにパスを回され続けてしまう。ボールを奪い返せるのは、自陣ペナルティーエリア付近。その段階で、前線にはFWドディ・ルケバキオしかいない。ロングボール1本の攻撃は、警戒されているのでほとんど効果がなかった……。

 この試合でスタメン出場を果たしたものの、システム変更のためにハーフタイムで交代となった宇佐美貴史は、試合後に「"動かされている"のと"動いている"の違い。僕らは動かされ続けて、向こうは動き続けている」と話していた。

 確かに、デュッセルドルフは常に後手に回り、後追いになってしまっていた。相手のハンドによるPKで何とか追いつき、守備ラインをさらに深くして相手の攻撃をはね返していくことを優先した分、相手にチャンスを許さないものの、これというチャンスはほとんどないまま試合は進んでいった。

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