【セルジオ越後の天国と地獄】Jリーグの移籍はまさに「回転寿司」のようなもの

2014年08月21日 週刊サッカーダイジェスト編集部

代わり映えしないネタをどのクラブが獲るかだけの話だ。

鹿島はボタフォゴからJ・ワグネルを獲得。しかし、新鮮味はまったくない。 (C) Getty Images

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※週刊サッカーダイジェスト9.2号(8月19日発売号)より
 
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 少し前の話になるけど、サガンのユン・ジョンファン監督がシーズン途中で退任するというニュースがメディアを賑わせた。報道によれば、クラブ側とはお互いに納得したうえでの契約解除という話だったけど、当時、サガンがJ1で首位に立ち、優勝争いをしていた状況を考えれば、成績が理由でないのは明らか。当事者同士にしか分からない、水面下での問題があったんだろうね。
 
 突然の退任劇のように感じられるけど、それなりに長い期間、監督とフロントの間では、意見の食い違いがあったんだと思うよ。厳しい監督として知られていたよね。もしかしたらそのキャラクターも、原因のひとつだったのかもしれない。
 
 もちろん、他から魅力的なオファーがあった可能性も否定できない。プロの世界では、監督にしても、選手にしても、所属するクラブに残るためというより、より良い条件を求めてステップアップするために頑張るのが普通なんだ。その駆け引きをするために実績を上げようとしているんだから、引き抜きがあったとしても不思議ではない。
 
 アルビレックスからグランパスに移籍した川又のケースも、今夏のマーケットで注目を集めたトピックだった。川又は昨シーズン、23ゴールを挙げて得点ランク2位となり、ベストイレブンにも輝いた絶対的なエースだったけど、今シーズンは開幕戦で負傷するなど、本調子ではない時期も確かにあったと思う。
 
 それでも、重要な選手であることに変わりはないはずで、クラブ側も川又の存在を重視していたとは思う。結果的にアルビレックスを離れることになったのには、やはりそれなりの理由があったんだろうね。契約問題のいざこざも取り沙汰されていたけど、いずれにせよ、クラブ側に引き留める力がなかったのは事実だし、エージェントの存在も大きかったのではないかな。
 
 彼らの仕事は、選手を動かしてナンボだし、そのきっかけが少しでもあれば、話が急速に進むことだってある。各選手がどのエージェントとタッグを組んでいるのか、そしてそのエージェントはどのクラブと太いパイプを持っているのかを改めて整理し直してみれば、マーケットの動きをある程度予測できるかもしれないね。
 
 その他の今夏の移籍を振り返ると、そこまでインパクトのある取引はなかったよね。それなりに動きはあったと思うけど、僕がいつも言っているように、Jリーグの移籍はまさに「回転寿司」のようなもの。6月にまとまった話だけど、レイソルのレアンドロ・ドミンゲスがグランパスに移籍した話にしたって、特に目新しさはない。
 
 近年、助っ人の補強に関してはこうした事例が顕著だ。レイソルが栃木からエドゥアルドを獲得したように、流れている「ネタ」は代わり映えせず、それをどのクラブが獲るかだけの話。F・マリノスのラフィーニャ? ガンバのパトリック? アントラーズのジョルジ・ワグネル? ヴォルティスのアドリアーノ? どれもどこかで聞いたことのある名前ばかり。新鮮さがないよね。
 
 そんななかでも、セレッソは元ドイツ代表のカカウを獲得したけど、現役ウルグアイ代表のフォルラン獲りに成功した時ほどのインパクトはない。ピークを過ぎている33歳のFWに、多くを期待していいものかな。様々な面において、バーゼルに放出した柿谷の穴を埋められる人材なのか、はなはだ疑問だね。
 
「大物獲り」なんて言われ方もされているけど、チームの戦力値としては、全然足し算になっていない。柿谷がいて、カカウを呼ぶならまだ分かるけど、言うなれば、プラスマイナスゼロ、下手をすればマイナスのままかもしれない。
 
 コロンビア代表のハメス・ロドリゲスを獲得したレアル・マドリーのようにとは言わないまでも、各クラブにはもう少し努力してほしいよ。

【Jリーグ移籍】2014年夏に新天地を求めた選手たち|外国籍プレーヤー編

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