大ナタを振るった名古屋はどう動く?強化担当の言葉と今季の"失敗"から探る冬の補強戦略

2018年12月13日 今井雄一朗

チームが求めるのは「攻守に活躍できる選手」。スペシャリストが生きる場所は思うほど多くない

得点王を獲得したジョーの残留は濃厚だという。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 プレーオフでのJ1昇格から、最終節でのJ1残留を決めたチームにとって、風間八宏監督のチームスタイルの浸透以上に重要になってくるのが、来季への補強の成否である。
 
 開幕前にジョーやランゲラックなどの大物獲得には成功したものの、全体的な戦力の底上げが不足していたのは、前半戦で勝点10しか獲得できなかった惨状を見るに明らか。夏の移籍市場で"仕入れた"実力者たちの助力を得て、どうにかJ1の舞台に踏みとどまったことを思えば、名古屋の強化部は昨季の二の轍を踏むことなく2019年への準備を進めたいところだ。
 
 強化方針の第一歩は、大ナタと言って差し支えない刷新人事にあった。リーグ戦終了から5日後にまず玉田圭司の契約満了を発表。今季の後半戦を支えた主力の放出はサポーターを中心に波紋を呼んだが、大森征之スポーツダイレクターは「彼のようなベテランの存在は大きく、真摯にプロフェッショナルなところを見せてくれた」と一定以上の評価をしながらも「来年もプレーする時、試合に出続けてほしかった。彼の将来を考え、グランパスを中長期的に見た時にこのタイミングだった」と若返りの意味も込めた判断だったと説明している。玉田だけでなく、チーム在籍20年の楢崎正剛や昨季からキャプテンを務める佐藤寿人も移籍が濃厚とされており、決まれば名古屋はまさしく一時代を終えることになる。
 

 新たなチームが求める人材は単純明快だ。攻撃に関与できるDFや、守備に貢献できるFWといった、「攻守に活躍できる選手」(大森SD)である。ポジションはあってないようなもの、フォーメーションは守備位置を示すものとする風間監督のスタイルにおいて純粋なスペシャリストが生きる場所は思うほど多くはない。前述のジョーやランゲラックはその"希少種"であり、両ゴール前で最後の仕事をするプレーヤーにはその専門性が認められるという傾向はある反面、それ以外のポジションにはある種のポリバレント性が求められる。
 
 例えば今季、ガブリエル・シャビエルは持ち前のテクニックを押し出すプレーよりも、身体を張って時間を作るタフなプレーを選択することが多かったが、それも「テクニックだけでなく根気強く、より走ることを求められるシーズンだった」ことがその理由だった。J2を席巻したファンタジスタでさえ攻守への貢献が必須とあらば、万能性は新たな選手補強における大前提であることは間違いない。
 
 具体的な補強ポイントについて名古屋の強化部は特に言及をしなかったが、2018年の戦いを見ればいくつかのポジションにテコ入れが必要なのは火を見るよりも明らかだ。

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