天皇杯制覇まで一歩及ばず…仙台の渡邉監督が覚えた危機感と伸びしろ

2018年12月10日 小林健志

最後の局面でプレーの精度を欠き、得点は奪えず

浦和の牙城を崩せず準優勝に終わった仙台だが、17本のシュートを放つなど善戦した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯・決勝]浦和1-0仙台/12月9日(日)/埼玉

 天皇杯決勝後の監督記者会見。優勝監督に拍手が贈られるのは珍しくないが、敗れた準優勝監督にも大きな拍手が贈られた。浦和相手に攻撃的なスタイルで臨んで善戦し、倍以上の17本のシュートを放ちながら敗れた仙台・渡邉晋監督の健闘もメディアから讃えられた。
 
 この日の仙台は、渡邉監督就任からの5年間の集大成とも言えるサッカーを見せた。指揮官が試行錯誤の末に行き着いた「ポジショナルプレー」や「5レーン」の考え方に基づき、選手が良い立ち位置を取って攻守に幅と厚みを持たせながら、浦和ゴールに迫っていく。
 
 J1リーグ27節・長崎戦や、天皇杯準決勝・山形戦で見せたように、ボランチの椎橋慧也が3バックの間に入り、4バックに変形してビルドアップを行ない、「青木選手が我々の1枚の中盤のアンカーに食いついてくれればその背中が空く。ジャメ(ジャーメイン)のところで足下におさまれば、我々が潜っていって数的優位を作れるという絵を描いていました」。浦和のアンカー青木拓矢の背後のスペースを使い、数的優位を作って攻撃する狙いだった。
 
 しかし、「スコアを動かされるとしたらリスタートか、我々のボールの失い方が悪くてカウンターを食らうかどちらか」という渡邉監督の予測は当たってしまう。13分、セットプレーから宇賀神友弥のスーパーゴールが決まったのだ。それでも仙台の選手たちは大きく崩れることなく、落ち着いて良い立ち位置を探しながら戦い続けた。後半、阿部拓馬が投入されると、前線でのボールの収まりが良くなったが、あと一歩のところでプレーの精度を欠き、得点を奪うことはできなかった。
 
「間違いなく選手もチームも成長していますし、やれることは増えています。特に今日のゲームは選手もやっていて楽しかったと思います。やっている選手が楽しくなければ、見ている人も楽しくありませんし、それを追求した先に勝利があると思います」
 
 50,978人の観客を集めた大舞台で、これまで積み上げた攻撃的なスタイルを表現できた感触は渡邉監督にもあった。

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