チャナティップの大活躍が示す「アジア戦略」の確かな成果。今後はタイに続く国の発掘も?

2018年12月08日 斉藤宏則

J1最終節の札幌vs広島戦は「アジア戦略」における特別な意味を持つ試合に

昨年夏に加入したチャナティップは完全移籍した今季、30試合・8得点とブレイク。持ち前のテクニックの高さを見せつけた。写真:徳原隆元

 12月1日の明治安田生命J1リーグ最終節。札幌ドームでは試合開始の時点で4位の札幌が2位の広島を迎え撃つ一戦が行なわれた。勝てば札幌がクラブ史上初となるACL出場を決める一戦であり、広島のほうも敗れればACL出場圏外の4位へ転落する可能性もある。そうした緊張感溢れる一戦とあって、札幌ドームには3万人を超える大観衆が詰め掛けていた。
 
 そしてこの試合にはもうひとつの焦点があった。札幌にはチャナティップ、広島にはティーラシンという、ともにタイ代表の主力選手が在籍しており、タイ人選手同士がJ1上位でACL出場権を争うシチュエーションにもなっていたのだ。
 
「達成感と言ってしまっていいのかどうかは分かりませんが、個人的には感慨深いものがありますね」
 
 大一番を前にそう言葉にしたのはJリーグマーケティング 海外事業部でアジア戦略を担当する小山恵氏だ。タイ人選手が在籍するチーム同士が最終節にJ1上位を争う。時間をかけてアジア戦略を推し進めてきた同氏にとっては特別な試合であることは間違いないだろう。
 
 2013年夏にベトナム代表(当時)のFWレ・コン・ビンが札幌加入を果たしたことによって、よりリアルにスタートしたJクラブと東南アジア諸国とのコミュニケーション。その後はイルファン、ステファノといったインドネシア人選手が甲府や札幌に加入したり、グエン・コン・フォンなどベトナム人選手が水戸に加入するなどし、「スポンサー獲得など事業の面ではある程度の成果にはなっていた」(小山氏)が、そうした選手たちがトップリーグであるJ1で躍動する事例はそう簡単には生まれなかった。
 
 だが、母国で"タイのメッシ"と称され国民的人気を誇るチャナティップが昨年夏から札幌で活躍し、それを契機にティーラシンやティーラトン(神戸)といったタイ代表の中心選手たちが続けてJ1のクラブに加わり、そこでコンスタントにプレーをするようになり、さらには中心選手として上位争いを演じるまでになった。Jリーグのアジア戦略は間違いなく確かな成果を挙げつつあると言っていいだろう。
 

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