6位からの下剋上で横浜FCも撃破!東京Vが90+6分に挙げた劇的決勝弾の舞台裏

2018年12月03日 海江田哲朗

D・ヴィエイラは、狂喜乱舞のゴール裏のサポーターのなかに身を躍らせた

こぼれ球に詰めてネットを揺らしたD・ヴィエイラが、サポーターとともに歓喜の雄たけびをあげた。写真:徳原隆元

 まれに、サッカーでは目を疑うような驚天動地のエンディングが訪れる。それをあらためて知らしめた一戦だった。
 
 12月2日、J1参入プレーオフ2回戦、横浜FC対東京ヴェルディ。中軸を担う内田達也を出場停止で欠き、井上潮音と渡辺皓太の2ボランチでボールを動かしていこうと試みた東京Vだったが、横浜FCのメリハリの利いたディフェンスに前進を阻まれる。
 
 前線の林陵平や李栄直には苦しい形でしかボールが入らず、攻撃にアクセントをつけられる佐藤優平は徹底的にマークされ、パスを受けた途端にことごとく潰された。
 
「非常に拮抗した感情的なゲーム。ファウルや選手が傷んだことで中断の多い試合になり、継続してプレーすることが難しかった」とロティーナ監督は語り、おおよそ横浜FCの思惑のなかでゲームは進行した。
 
 後半、横浜FCにはゲームを決めるチャンスが度々訪れた。65分、イバのヘディングシュートはクロスバーの上。71分、ロングカウンターから北爪健吾の放ったシュートは上福元直人がファインセーブ。
 一方の東京Vはレアンドロ、梶川諒太、ドウグラス・ヴィエイラを送り込み、ベンチワークで戦局の打開を図るが、決定機を作り出すには至らない。
 
 アディショナルタイムは7分。引き分けでプレーオフ決定戦に進出できる横浜FCはより一層厳重に守りを固め、東京Vに付け入る隙はほとんどないように思われた。
 
 90+6分、東京Vが得たコーナーキックのチャンスに、ゴールマウスを出た上福元が攻撃に加わる。佐藤の入れたボールに敢然と飛び込んでいったのは、その上福元だった。強烈なヘディングシュートを枠に飛ばし、南雄太がはじく。こぼれ球に誰よりも速く反応したD・ヴィエイラが右足でプッシュ。ゴールネットが揺れるのを見届けたD・ヴィエイラは、そのままの勢いで狂喜乱舞のゴール裏のサポーターのなかに身を躍らせた。
 
 上福元は言う。
「まさか自分のところに来ると思わなかったですけど、あのタイミングなら自分がフリーになるとわかっていたので。とにかく枠に飛ばし、GKの足あたりに当たってこぼれてくれればと。本当に、全員の思いがこもったゴールです」

 J1最後の一席をめぐる決定戦は8日。これ以上ない劇的な幕切れで勝利を掴み取った東京Vが、ジュビロ磐田のホーム、ヤマハスタジアムに乗り込む。
 
取材・文●海江田哲朗(フリーライター)
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