【熊本】回避できなかったJ3降格。ワースト失点、主軸の引き抜き…転機となったのは?

2018年11月28日 井芹貴志

自陣からビルドアップしていくことを目指したチームだったが…

鹿児島のJ2昇格決定で、J3降格が確定した熊本。序盤は好調を維持していたが……。写真:徳原隆元

 11月25日に行なわれたJ3リーグ33節、鹿児島ユナイテッドFC対アスルクラロ沼津はホームの鹿児島が勝利し、J3での2位が確定。これにより、FC琉球と鹿児島が来季のJ2に昇格することが決まり、J2を2年連続21位で終了していた熊本は、最下位の讃岐とともに来季J3に降格することになった。


 昨年、シーズン途中の監督交代によって浮上を図ったものの自動降格圏に終わりながら、J3からの昇格が1チームのみとなったことでJ2に残留した熊本は、雪辱を期すにあたって大宮で昇格経験を持つ渋谷洋樹監督を招聘。若い選手を育てながらベースアップを図るとともに、組織的なサッカーの構築を狙いとした。渋谷監督自身、昨季大宮をシーズン途中に解任されており、下位に低迷した昨季の悔しさもモチベーションに変えることが期待されていた。

 実際、自陣からボールをつないでビルドアップしていくことを目指したチームは、開幕戦こそ敗れたものの、期限付き移籍で加わった皆川佑介、2年目の安柄俊の2トップも期待に応え、序盤の10試合で5勝2分3敗と好スタートを切る。

 しかし低迷への転機となったのはゴールデンウィーク連戦。アウェーでの岡山戦以降、4試合で13点を失い4連敗。15節の水戸戦で5試合ぶりの勝利を挙げたが、その後はクラブ記録となる13試合勝ちなしで、降格圏から抜け出せないままシーズン終盤を迎える。
 
 残留を争っていた京都や讃岐といった勝点の近いチームとの直接対決にも敗れ39節の岡山戦からはそれまで多用していなかったロングボールも交えて相手の背後を狙う意識を強調。最後の4試合は2勝1分1敗と勝点を積んだものの、21位を確定するにとどまり降格圏を脱することができなかった。

 低迷の大きな要因は、リーグワーストの79失点を喫した守備だ。目指すスタイルを実現するために必要な、自陣から組み立てる際の技術や判断が足りなかったことでシーズンを通してメンバーが定まらず、ディフェンスが安定しなかった。また、守備組織を破られる形よりも個の対応の遅さ、寄せの甘さによって招いた失点はアンラッキーなものも含め例年以上に目立ち、結果が出ないことで自信を失い、戦い方が消極的になったこともその背景にはある。

 そうした点も踏まえ、渋谷監督は「J2の戦い方をもっと私が分析し、シンプルに考えてやることが重要だった。技術的なところを高めたり、必要な部分を十分に落とし込めず、イメージの共有ができなかった」と述べている。
 

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