ドロー=敗退の状況下で退場者… ロティーナ体制2年目の東京Vが絶体絶命の難局で見せた成長の跡

2018年11月26日 海江田哲朗

アクシデントに直面しても冷静さを失わなかった

厳しい状況に追い込まれながら、敵地で大宮に競り勝った東京V。この勝利で勢いに乗れるか? (C) SOCCER DIGEST

 二重三重の難局を乗り越えた東京Vが大宮を辛くも退け、J1参入プレーオフ1回戦を突破。12月2日、横浜FCとの2回戦に進出した。

 立ち上がり、東京Vはボールポゼッションで圧倒し、ゲームの主導権を握る。一方、年間順位で上位のアドバンテージを有する大宮は守備のブロックを形成。カウンターでチャンスを窺った。大宮を押し込むことに成功した東京Vだったが、前半はゴール前を崩す有効打を欠き、決定機を作れずにゲームを折り返す。


 膠着しかけていたゲームを揺り動かすきっかけは、思わぬ形で訪れた。59分、内田達也が2枚目の警告を受けて退場。攻撃に変化を加えるべく交代策を準備していたロティーナ監督はプランの変更を余儀なくされる。

「前半と同じやり方を継続しつつ、レアンドロを投入して林陵平との2トップに変更しようと考えていたタイミングで不幸にも退場者が出てしまった」

 同点では敗退となるレギュレーションに加え、数的不利。それも中盤の要である内田を失った。東京Vは絶体絶命の窮地に立たされる。

 ひとまずロティーナ監督は李栄直をピッチに送り込み、井上潮音をアンカーに配して中盤のバランスを手直し。そこで、劣勢をものともしない反発力を見せたのが、左サイドの香川勇気である。63分、ドリブル突破から決定機を演出した香川は、70分に再び積極的な仕掛けから直接フリーキックのチャンスをゲット。佐藤優平がゴールに向かう速いボールを蹴り、飛び込んだ平智広が頭で合わせ、東京Vが先制点を奪った。

「セットプレーのワンチャンスを決められてよかった。あそこで触ってほしいというところで、平が当ててくれました」(佐藤)

 形勢逆転。以降、大宮は猛攻を開始し、東京Vはひたすら耐える時間に突入する。終盤、大宮は立て続けに決定機を作るが、東京Vの身体の張ったディフェンスにはね返され続け、とうとう残り時間が尽きた。

 大前元紀、マテウス、茨田陽生ら、大宮が擁する優れた攻撃手たち。90分を通して彼らの能力を最大化させる計略が練り込まれていれば、ゲームの展開はもちろん、結果も違ったものになったかもしれない。
 
 2年連続のプレーオフ出場となった東京Vは、アクシデントに際しても冷静さを失わず、厳しい戦況下にあっても屈することなく前だけを見ていた。ロティーナ体制2年目の確かな成長を感じさせる。

 次なる舞台はニッパツ三ツ沢球技場。最後に待ち受けるJ1の16位への挑戦権を懸けて、横浜FCとの決戦に挑む。

取材・文●海江田哲朗(フリーライター)
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