小さな修正で鳥栖を復活させた"金明輝采配の妙"。残留を懸けた最終節で鹿島をいかに封じるか

2018年11月25日 荒木英喜

ボールを奪ってから攻撃にかける人数は今のほうが増している

鳥栖は33節終了時点で勝点40の15位。最終節の鹿島戦は引き分け以上で残留が決まる。(C)SOCCER DIGEST

 リーグ戦残り5試合の時点で金明輝監督に代わり、33節・横浜戦までの4試合を消化して3勝1分と鳥栖が息を吹き返した。監督交代時の29節終了時には自動降格圏の17位に低迷していたが、前述の戦績により15位まで浮上。最終節のアウェー鹿島戦で引き分け以上ならJ1残留を達成ところまでチームは復活した。

 金監督が就任した時点でチームを一から作り直す時間的猶予はなかったため、彼がなにかを大きく変えたわけではない。監督就任時、「今までどおり、守備のベースは変わらず、失点はリーグで5番目に少ないので、そこは意識だったり、ハードワークだったり、そういうところは継続していきます」と話し、「点を取ることに対して、もう少し人数をかけるとか、連係の共通意識をしっかり持たせること」と続けた。

 鳥栖の勝てない要因は得点力不足ということがハッキリしていたため、「縦パスの意識」や「リスクを冒しても攻撃に人数をかけること」にフォーカスして練習に取り組んだ。そうした取り組みが金監督の初戦となった仙台戦で3ゴールにつながり、勝利を手にしたことで確かな手応えをチームが得たことが大きかった。
 
 今節・横浜戦後、高橋祐治は「FWから守備のスイッチが入ることによって後ろがどんどんズレていくように確認でき、ボールを奪ってからのショートカウンターもできています」と、守備をベースにしながらも、それが攻撃につながっていることでゴールにつながっていると話す。
 
 この試合では「守備の時にサイドMFをSBのように下げすぎないこと」を意識したと安在和樹は話した。マッシモ・フィッカデンティ監督の時はフォーメーションが4-3-1-2や4-3-2-1だったので今の4-4-2と比べると前線の人数は前監督時代のほうが多かったように感じる。しかし、FWの選手が守備のスイッチを入れて相手のパスコースを限定し、それに中盤から後ろの選手が連動してサイドMFを低い位置まで下げずに守り切ることができるようになったため、ボールを奪ってから攻撃にかける人数は今のほうが増している。
 

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