【松本】「大舞台の決勝でずっと負けてきた」前田大然が味わったサッカー人生初の瞬間とその先へ

2018年11月20日 塚越 始

「当然前へ出て行く力はあるが、後ろに戻る力も備えている」(反町監督)

サッカー人生でほとんど初めてという「優勝」の喜びを味わった前田。反町監督も数字では測れないその貢献ぶりを讃えた。写真:徳原隆元

 後半アディショナルタイムに交代してベンチにいた前田大然は、試合終了と同時にピッチ内にいた選手たち一人ひとりのもとに駆け寄ってJ1昇格決定を伝えた。

 
 大分トリニータが土壇場でモンテディオ山形に1-1に追い付かれた。その時点で、前田から粘り強い守備が武器の岩間雄大が投入される。その交代が、ピッチにいた選手たちにとって、"0-0のままで大丈夫"というメッセージになった。大分かFC町田ゼルビアのどちらかが引き分け以下ならば、J1昇格決定だったからだ。
 
 それでも上手く状況を飲み込めずにいたピッチ内の選手たちに、前田は笑顔で駆け寄り吉報を届けた。
 
「ホッとしています」
 
 それが試合後の前田の第一声だった。歓喜から安堵の笑顔に変わっていた。
 
「高校の時からアジア大会でもそうでしたが、大舞台の決勝でずっと負けてきました。優勝したことが全然なかったんです。だから初めてと言ってもいいぐらい、こうしてひとつ優勝できて良かったです」
 
 J2のステージとはいえ頂点に立てた。それは大きな自信となった。
 
「上手くいかないこともありますが、でも優勝できたのは、これまで積み上げてきたものがあったからです」
 
 今季はセルジーニョの11ゴールに続く、チーム2位の7ゴールを決めた。ただし、昨季レンタル移籍した水戸ホーリーホックでの13ゴールからは減ってしまった。
 
「まだまだ成長できる部分はあると思うので、J1の舞台でどれだけ通用するのか楽しみにしています。まだどうなるか分からないですけれど、来年が楽しみです。ゴールを決めることが大事。ゴールの数が昨年より少なくなってしまったので、そこはもっと貪欲に狙っていきたいです」
 
 反町監督は前田の貢献について、次のように語っていた。
 
「大然は当然前へ出ていく力がありますが、さらに後ろに戻る力も備えています。特に徳島がアンカーひとりの状況で、小西、前川、さらに杉本がサイドに落ちてくる形で、そこへ私たちのボランチが出ていく。ただボランチがズレたところを、シャドーの大然や中美が見なければ、徳島のテクニカルな攻撃は防げないよ、という話はしていたが、今日はそこがしっかり対応できていました」
 
 数字だけでは測れない貢献度。前田のその"前"のみならず"後方"にも向けたパワーがあってこその松本のJ2優勝と言えた。
 

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