川口能活が引退会見で語った“余力”を残して辞める理由と相模原での3年の意味

2018年11月18日 小須田泰二

「プレーするのが一番の喜び」だと言い続けきた男が、自らの意思で25年間のプロキャリアにピリオドを打つ

今季をもって25年のプロ人生に終止符を打つことになる川口。多くの印象深いパフォーマンスを見せてくれた。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 川口能活がグローブを置く。
 
 プロ生活25年。日本代表歴代3位の116試合出場を誇り、4度のワールドカップを経験した43歳の川口が今シーズン限りで現役生活にピリオドを打つ。
 
 11月14日の相模原市内で行なわれた引退会見。
 
 大量のフラッシュを浴びながら黒いスーツ姿で川口は壇上へと現われた。声を震わせながら、引退を決断した理由を語った。
 
「この1、2年ぐらい、プレーを続けるか、あるいは引退するか、その狭間で揺れていました。サッカーは大好きですし、続けたい。今年のロシア・ワールドカップをはじめ、日本代表の戦い、各カテゴリーのアジアでの戦いぶりを見まして、僕が代表でプレーしていた時よりも、上のレベル、世界で戦える日本になってきたと思った。選手としてではなくて、違った形で貢献したいと引退する覚悟を決めました」
 
 その後も記者の質問に対して一つひとつ言葉を選びながら丁寧に答えるその姿は、これまでの川口らしく誠実さに溢れていた。
 
 引退を決断して、この日を迎えた気持ちについて聞かれると、「やり遂げた気持ちと、まだできるというか。身体はすごく元気なので、完全燃焼したかといえば、まだ"余力"はある。ただ悔いはないし、自分がつねにピッチ上で、あるいはピッチ外でもベストを尽くしてきて、この決断に至ったので、後悔はしてませんし、次のステップに行くという、強い意思はあります」と胸の内を明かした。
 
 今後については、「自分はやはりサッカーでここまで、人生を歩んできたので、やはり現場で、指導者として、自分の経験したことを、伝えたい。指導者としての歩みを始めたい」と話したうえで、「ゴールキーパーが人気のあるポジションになるためにはどうしたらいいか。形にこだわっていきたい。プレーのかっこよさということで、自分が育てることができればと思う。まだそのノウハウもないし、指導実績もないので、これから勉強していきたい」と目標を語った。
 
 もう一度サッカー人生を歩むとしたらどのポジションがいいか? という質問に対しては、間髪入れずに「ゴールキーパーです」と即答。「大変なこともありましたが、ゴールキーパーの練習が好きですし、もう一度サッカーをやれるとしても、もう一度ゴールキーパーをやると思います」と、その理由を述べた。
 
 怪我が理由であれば、あきらめがつくかもしれない。"余力"があるのに、次のステップへと進む。「プレーするのが一番の喜び」だと言い続けきた男が、自らの意思で25年間のプロキャリアにピリオドを打つことが、どれだけ大変な作業だったことか。想像するだけで胸が熱くなる。
 

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