大一番のインドネシア戦で鬼気迫るプレー!! 激しく、泥臭く戦った大型ボランチの熱き言葉

2018年10月30日 安藤隆人

伊藤が送った『ミドルシュートは有効だ』というメッセージが先制ゴールにつながる

激しい雨が降りしきる中で行なわれたインドネシア戦。伊藤が声を張り上げて味方を鼓舞する。写真:佐藤博之

 大きな成長を感じられた90分間だった。
 
 U-20ワールドカップ出場を決めたインドネシア戦。U-19日本代表の大型ボランチ、伊藤洋輝は最後まで闘う気持ちを持ってピッチに立ち続けた。

 
 もともと視野が広く、強烈なキックを持ち、技術もあって、高さもあるというスペックの高い選手だったものの、球際や闘争心の部分ではどうしても物足りなさを感じる面は否めなかった。だが、世界の切符が懸かったインドネシア戦での伊藤は、『鬼気迫る』という表現がぴったりと当てはまるプレーを随所に見せた。
 
 前半は持ち前の冷静さとキックで試合の流れを作り出した。ボランチでコンビを組む齊藤未月との距離感を保ちながら、ボールを受けてパスを散らした。その状況を見ながら、伊藤はあることを考えていた。
 
「ボールを受けるたびに自分のところで何回か(シュートが)狙えるかなと思っていた」
 
 インドネシアは5バックを敷き、ダブルボランチもディフェンスラインの近くでブロックを作っている状態だった。それだけに相手のボランチ脇でボールを受ければ、十分にミドルシュートは狙える状況にある。
 
 伊藤はそれに気付くと、「最初は重要な試合でしたし、何か躊躇してしまっていました。でも、『とりあえず入らなくても良いから打とう』と思った」と、まずは行動に移した。22分、中央左寄りの位置でボールを持つと、思い切りの良いミドルシュートを放った。
 
 ボールはバーのはるか上を超えて行ったが、伊藤が注目したのはその後のインドネシアのリアクションだった。
「すごく大きく外れてしまったのですが、それでも相手が前に出て来なかったので、それをみんなが感じてくれて、(東)俊希のゴールにつながったと思います」
 
 こう胸を張ったように、伊藤が率先して『ミドルシュートは有効だ』というメッセージを送ったことで、ボランチ脇のエリアはチームの意識としてシュートのイメージが強くなった。そして40分、中盤の右サイドでボールを受けた伊藤がDFふたりを引きつけて、左に出来た広大なスペースにいる左サイドバックの東俊希へ横パス。このパスには『ミドルを打て』という伊藤のメッセージが込められていた。
 
 それを受け取った東は、ワントラップから迷わず左足を一閃。矢の様な弾丸ライナーがゴール右隅に突き刺さった。イメージが共有できていることを実証する一撃で、日本が先制した。
 

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