大敗スタートから公式戦5連勝へ――長谷部誠の冷静な視点で振り返る新生フランクフルトの序盤戦 【現地発】

2018年10月26日 中野吉之伴

「悪い流れかというと、そういう感じでもない」

開幕から3戦は出場メンバーから外れた長谷部だが、以降は試合ごとに存在感と重要性を増しており、ヒュッター監督(左)にとっても不可欠な存在となっている。 (C) Getty Images

 フランクフルトのシーズンスタートは散々だった。
 
 昨シーズンのDFBカップ王者として臨んだスーパーカップでは、ブンデスリーガ王者のバイエルンに0-5で完敗。さらにその1週間後のDFB杯1回戦では、4部リーグのウルム相手に、まさかの敗退(0-1)……。新監督アディ・ヒュッターにとっては、苦難の船出となった。
 
 バイエルン戦後、長谷部誠はチームの状態についてこう語っていた。
 
「こういうタイトルが懸かったゲームで、こういう負け方をしたということについては、もちろん気持ち良くはないです。新監督のやり方というよりも、メンバーが変わっているというところが大きいのかな。
 
 主力選手というか、すごく良かった選手たちが引き抜かれて。そこの穴を埋めるという部分で、新加入選手たちももちろん頑張っていますけど、そこはもう少し時間がかかるのかな、というのは、やっていて感じます」
 
 GKウカシュ・フラデツキー、MFオマール・マスカレルとケビン=プリンス・ボアテング、そしてFWマリウス・ヴォルフが、それぞれクラブを去った。いずれも昨シーズン、フランクフルトの躍進に欠かせない選手だった。そう簡単に、彼らの穴は埋まらない。
 
 加えて、新監督のサッカーへの対応も必要だった。
 
 ヒュッター監督は、レッドブル・ザルツブルクでも、ヤングボーイズでも、クラブを優勝に導いている。マイボールを大事にしながらパスを素早く回し、FWのポストプレーと両サイドのスピードを活かした攻撃が特徴だ。
 
 ニコ・コバチ前監督が築いた、運動量豊富に堅い守備組織を築き、素早い守備から攻撃への切り替えで相手ゴールを急襲するサッカーを残しながらも、新しいアイデアを具現化できるようにならなければならない。
 
 獲得した選手をどのようにチームに順応させるか。"ヒュッター・サッカー"をどのように浸透させるか――。
 
 両サイドにスピードある選手が必要なヒュッターは、ハンブルクからフィリップ・コスティッチを獲得。さらに、新GKフレデリク・レノウに不安定なプレーが目立っていたため、ドイツ代表GKケビン・トラップをパリ・サンジェルマンから呼び戻した。
 
 ただ、補強がすぐに結果に結びつくことはなかった。その後もしばらくは、なかなか勝てない時期が続く。それでも、焦りは感じさせなかった。
 
「5試合で勝点4は、間違いなく少ないです。ただ、やっていて本当に悪い流れかというと、そういう感じでもない。アウェーで、ボルシアMGとかドルトムントあたりに負けるっていうのは、起こりえることだと思う。そこで下を向かずに、続けていって。次のホーム、ハノーバー戦は絶対に勝たないといけないと思います。そこにフォーカスしていきたいです」
 
 そう長谷部が語ったように、良い兆しが見られたのは、6節ハノーファーでの勝利(4-1)だった。サイドアタッカーが本職のコスティッチを左ウイングバックにコンバート。さらにクロアチア代表のアンテ・レビッチが、ようやく怪我から復帰した。

次ページ浮かれもせず、悲嘆もせず――

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