神戸の監督交代の二面性――リージョは「天使」となるか、「悪魔」となるか

2018年10月22日 白井邦彦

体制変更後に守備が崩壊

シーズン終盤に指揮を託されたリージョ監督。しかし就任以降は、いまだ勝利をあげられていない。(C)SOCCER DIGEST

 ポゼッションスタイルの進化を目指し、戦術家フアン・マヌエル・リージョを招聘したヴィッセル神戸。クラブの"バルサ化"への本気度が窺える一方で、体制変更に少なからず選手たちの戸惑いが見られ、不調の要因にもなっている。シーズン終盤のデリケートなタイミングでの監督交代は果たして正解だったのか。

 バルセロナで一時代を築いたジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)が影響を受けたと言われるリージョ監督。"バルサ化"に本腰を入れる神戸にとって、ポゼッションスタイルを標榜する名将は打って付けの人物だ。ただし、それには"J1に残留すれば……"という注釈を付ける必要があるだろう。

 リージョ体制の発表は突然だった。26節のG大阪戦に敗れて3連敗を喫した2日後、神戸市内のホテルで明らかになった。当時のチームは8位でまだ来季のACL出場権を狙える状況。チーム活性化を図っての新体制への移行かと思われた。
 だが、記者会見の席で三木谷浩史代表取締役会長は「チームの成績にかかわらず、我々が目指しているポゼッションサッカーに対して、非常に経験値が高くてインテリジェンスのある監督を探してまいりました。その中で、ご縁があってフアンマ(リージョの愛称)を見つけられた。日本とヨーロッパはシーズンが違い、タイミング等々は意外と難しいため、(このタイミングでの)獲得に至りました」と経緯を述べた。言い換えると、ACL出場という目先ではなく、バルサ化という将来を優先させたわけである。

 その決断は素晴らしい。だが、タイミングは必ずしも良いとは言えない。

 特に共通理解の浸透に時間がかかる守備を、シーズン後半に再構築するのはリスキーだと思われる。現に、ネルシーニョ→吉田孝行ラインで積み上げてきた守備は、体制変更後に崩壊している。

 林健太郎コーチが代行監督(リージョの就労環境が整うまで)として指揮を執った27節の浦和戦で4失点すると、続く鹿島戦では、リージョがコーチとしてベンチ入りするも5失点。正式に監督として指揮を執った長崎戦で先制点を許すと、首位の川崎との一戦では再び5失点と、脆さを露呈している。

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