イニエスタの「守備の個人戦術」が神戸を安定飛行させる鍵?

2018年10月21日 白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト)

誰よりも早い危機察知能力。

川崎戦のイニエスタは守備面でもサッカーセンスの良さを伺わせた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ30節]川崎5-3神戸/10月20日/等々力
 
 アンドレス・イニエスタといえばトラップやパス、ドリブルなど華麗な攻撃面が注目されがちだが、4試合ぶりにスタメン出場を果たした川崎戦では守備面でも傑出したサッカーセンスを見せていた。
 
 守備の際の鉄則といえば、相手がボールを持った時のコースの限定方法だ。通常は身体の向きを使ってコースを限定し、相手を行かせたい方向に誘導する。
 
 しかしイニエスタは、1試合を通してそれだけではなく、まず最初にチームとして最も危険なコースを顔と目線を使って味方に伝え、その後で敵のコースを限定しに動いていた。自らが「一番危ないコース」に気付いていることを、ピッチ上の誰よりも早くアクションとして示しているのだ。
 
 イニエスタのこの動きによって、神戸のチームメイトが危険なコースに気付いて潰す。川崎の選手たちも決定機に繋がりそうな選択がバレていると察して、結果的に安全なパスに逃げる――。とりわけ前半はそんなシーンが何度もあった。
 
 34歳と年齢的に豊富な運動量は望めず、小柄ゆえ決して対人に強いわけでもないが、イニエスタはこの段違いの危機察知能力の高さで、ディフェンス面でも相当な貢献をしていた。
 
 味方に対してポジションの修正指示を出し続けた姿からも分かる通り、世界最高峰のMFが神戸にもたらす影響は、単なる攻撃面のスペクタクルだけではなく、チームが勝つために不可欠な守備にも現われていたのだ。
 
 ただ、神戸はこの日も後半に入って間延びして前からのプレスが掛からなくなり、結果的に5失点して敗戦。ファン・マヌエル・リ―ジョ監督も試合後にこう吐露した。
 
「相手ゴールの近くまで押し込み、失ってもすぐにボールを奪い返すという目指すスタイルは、70分あたりまでまずまずできていた。ただ、体力的なマネジメントが難しかった。先に3得点して負けるというのは受け入れがたい」
 
 神戸は直近5試合で計17失点とディフェンス面の改善が不可欠だ。イニエスタの守備面における際立った個人戦術が、グループ戦術、そしてチーム戦術にまで伝染して浸透させることが、守備を安定させるうえでひとつの手なのは間違いないだろう。
 
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)
 
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