パナマ戦で際立った南野拓実の『回転数』。特徴が違う香川真司とのポジション争いは楽しみ

2018年10月14日 清水英斗

先制点は南野の魅力が凝縮されたゴールだった

南野はパナマ戦で1ゴール。素早いターンでGKとの1対1に持ち込み、先制点を流し込んだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップのメンバー当確を予感させる、南野拓実の先制ゴールだった。
 
 国際親善試合のパナマ戦、42分、高い位置で青山敏弘がインターセプトに成功すると、刹那、南野は背後のスペースにチラっと首を振り、バックステップしながら縦パスを呼び込んだ。そして鋭くターン。相手の当たりに背中で耐え、左前方へ抜け出す。最後はGKの隙を突いてニアポストへ流し込んだ。
 
 南野の魅力が凝縮されたゴールだった。スペース認知と判断の早さ。そして、圧倒的なボディバランス。接触されても、次の足がすぐに出る。南野はバランスの回復が極めて早い。相手が1歩を踏む間に、2歩も3歩も繰り出す『回転数』がある。
 
 この回転数は、南野だけでなく、中島翔哉らにとってもキーワードだ。相手の『フィジカル』を、身体の小さい選手が回転数で飲み込む。手数で支配する。多少のコントロールミスがあっても、セカンドタッチの足がすぐに出るので、「ミスだ」と思って飛び込んできたDFを、逆にかわしてしまう。すべてのボールタッチを、まるで天然フェイントのように利用できるのが、南野の『回転数』だ。そのプレーはフィジカルや球際を持ち味とするパナマに対しても、しっかりと通じていた。
 
 そのほか、汎用性の高さも光る。南野は狭いスペースで回転数の高いプレーを見せ、ターン技術や俊敏性を生かした。その長所は、前回のコスタリカ戦でも中島や堂安律、あるいは1トップの小林悠との組み合わせでも発揮された。
 
 一方、今回のパナマ戦の後半は、1-0とリードしたことで、追うパナマが前掛かりになり、日本は自陣に引く展開になった。必然、敵陣に空けたスペースを活用するロングカウンターの攻撃パターンが増える。原口元気や伊東純也の場合、むしろ狭くて窮屈な前半よりも、生き生きとプレーする姿が目立った。
 
 だが、こうした状況は、南野の場合はどちらでもいい。後半のようにロングカウンターが増えても、背負った相手をターンして振り切り、ドリブルで運んだり、鋭いフリックで大迫勇也に当てたり。低い位置でも起点を作り、敵陣へ押し返すことができる。「ターンの技術」と言えば香川真司だが、曲線的な香川に比べると、南野は自ら運び、直線的に状況を打開する魅力がある。よりアグレッシブだ。
 

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