代表選外はタイミング的にも好都合! 今季初ゴールの武藤嘉紀がプレミアリーグで見据えるもの【現地発】

2018年10月11日 松澤浩三

「なぜ獲得したか分からない」と言っていたファンも…

“夢の劇場”オールド・トラフォードで大仕事をやってのけた武藤。そのゴールが、彼への評価を一変させた。 (C) Getty Images

「全然、全く気にしてないですね」

 現地時間10月6日に行なわれたプレミアリーグ第8節のマンチェスター・ユナイテッド戦後、森保一監督率いる日本代表の招集リストから漏れたことについて聞かれた武藤嘉紀の言葉である。

「だって長い時間、試合に出ていなかったでしょ? それで呼ばれても、という感じは自分でもしていて」

 本人の言うとおり、今夏のニューカッスル移籍後、武藤は真価を見せられないでいた。ユナイテッド戦まではプレミアリーグで先発出場がなく、与えられた出場機会は試合終盤の10~15分に限定され、総出場時間は86分に過ぎなかった。

 加えてシュート数は、プレミアリーグ公式サイトの集計では、わずか1本のみである。ラファエル・ベニテス監督の守備的なスタイルの影響もあったとはいえ、ストライカーとして本領を発揮しているとは言いがたかった。

 フェイスブックやオンラインフォーラムでは、ニューカッスル・ファンの間で、武藤の存在価値について問うコメントも少なくなかった。

 今から遡ること約3週間前の9月中旬に、大学時代の友人と飲みに行く機会があった。イングランド北東部出身で、生粋のトゥーンアーミー(ニューカッスル・ファンの俗称)である彼に「武藤についてどう思うか?」と尋ねてみると、「どう思うも何も、分からないというのが正直なところ」と切り出し、言いにくそうに続けた。

「残り時間の少ない状況で起用されて、特に目立ったプレーをするわけでもないし、得点に絡むところも見たことがない。なぜ獲得したのか分からないんだ。ブンデスリーガでは点を取っていたみたいだけど、ニューカッスルでは苦しんでいる。ファンの中では、そういう見方が多いんじゃないかな」

 つまり、「期待薄」だったのだ。だが、サッカーファンとは単純なものである。武藤が今シーズン初先発で初ゴールを挙げたユナイテッド戦の直後に、彼から送られてきたSMSの内容は、まさに手のひら返し。携帯の画面を見ながら、思わず笑ってしまった。

「FWとしてプレーするヨシの姿を"初めて"見たが、いいゴールだった。今日のプレーだったら、今のニューカッスルならレギュラーになれる可能性もあるぞ!」

 無論、1点取ったからといって、これでレギュラーの座を奪ったわけではないし、タフなプレミアリーグで成功できることが確約されたわけでもない。だが、満員のオールド・トラフォードでユナイテッド・ファンを茫然自失に、そして熱狂的なトゥーンアーミーを狂喜乱舞させたこのゴールの持つ意味は、決して小さくはない。

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