涙の静岡ダービー完敗から1年… A代表初選出を掴んだヒーローの登場と清水“生え抜き”組の充実

2018年10月09日 前島芳雄

シュート2本で2得点「コースを狙って打てば枠に行くというのは感じました」

ヒーローインタビューでは昨年の悔しさとサポーターに対する想いを語った北川。静岡ダービーで見事に雪辱を果たした。写真:徳原隆元

[J1リーグ29節]清水5-1磐田/10月9日/アイスタ
 
「去年の自分の涙だったり(松原)后の退場だったり、サポーターも選手全員も悔しい思いをしたと思いますけど、今日こうして勝点3が取れたことが次の成長につながると思うし、またこうしてたくさんのサポーターの方々と喜び合いたいと思います」
 
 溢れ出そうな涙と感情に声を奮わせながら、静岡ダービー終了後のヒーローインタビューでこう語った北川航也。開始50秒の先制ゴールと72分の4点目を冷静に流し込み、ドウグラスの2得点もアシストした成長著しい22歳のストライカーは、5-1の大勝という結果に加えて"想い"の面でもサポーターを歓喜させた。
 
 プレー内容だけで見ればドウグラスをMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばざるをえないが、清水サポーターにとって心のMOMは、間違いなく地元育ちでユース出身の北川航也だろう。
 
 またこの日のプレーは、彼の成長を象徴するものでもあった。キックオフから50数秒で決めた先制ゴールは、ショートカウンターから利き足ではない左足で右ポスト際に流し込んだ形。2点目は、教科書のような動き出しで石毛秀樹のスルーパスから裏に抜け出し、ボールを少しだけ浮かせて詰めてくるGKを抜いた形。どちらにも共通するのは、余計な力みがなく冷静かつ正確にコースを突いたことだ。しかも、北川がこの試合で放ったシュートは2本だけなので、決定率は100%だった。
 
 冒頭の言葉にも表われているように、この試合に向けて気持ちはいつも以上に昂ぶっていた。昨年は同じ29節に同じアイスタで磐田と戦い、0-3で完敗。北川自身も良いところをほとんど出せず、タイムアップ後にピッチ上で大粒の涙を流した。その試合で45+1分に相手の挑発に乗って退場になってしまった同期の松原后とともに、人一倍リベンジに燃えていた。
 
 だが、そんな中でもより緊張感が高まる決定機を前にして"力み"が出なかったことが最大の成長点だ。
 
「点を取れなかった時期(今季19~26節まで9試合)があったからこそ、今があると思います。その時期はシュートがすべて力んでいたのを自分でも感じたし、力む必要はないなと。相手より半歩出ていたらシュートは打てるし、100%の力で打つ必要もないし、コースを狙って打てば枠に行くというのは感じました。取れない時期が決して無駄じゃなかったなというのはプレーしていても感じますし、それが今日の結果につながっていると思います」(北川)
 

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