横浜の連勝&大量得点は偶然ではない!攻撃サッカーの裏で進みゆく"守備の意識改革"

2018年09月30日 藤井雅彦

ヒントは『ボールを持っていない場面でのファイト』

仙台戦では大量5得点。素早い攻守の切り替えを意識し、守備のバランスも保った。(C)J.LEAGUE PHOTOS

[J1リーグ28節]横浜5-2仙台/9月29日/ニッパツ

 アウェーでの8得点大勝に続いて、ホームでも5得点を挙げて完勝を収めた。これで今季の総得点数は50得点となり、依然としてリーグトップの数字を誇る。昨季以前とスタイルが激変した横浜の圧倒的な攻撃力に注目が集まっているのは想像に難くない。
 
 しかし、その攻撃力を下支えしている守備を忘れてはいけない。アンジェ・ポステコグルー監督が「ボールを持っている時も持っていない時も自分たちのサッカーができた」と話せば、守護神のGK飯倉大樹は「今日はチームとしてファイトしていた」と振り返る。ヒントは『ボールを持っていない場面でのファイト』にあった。
 
 端的に言えば、それは守備でのアクションということになる。横浜はポゼッションを主体としたサッカーで相手ゴールを狙うが、すべての局面でボールを持てるわけではない。ポイントになるのは相手ボールになった瞬間の、いわゆる攻守の切り替えだ。
 
 アンカーの扇原貴宏はこんな表現で試合を振り返った。
 
「今日は失い方が良かった。チームとしてどんどん前へ行けていたし、選手同士が近い距離感でプレーできていた。だから変な失い方がなくて、カウンターを受ける場面が少なかった」
 
 両SBがインサイドにポジションを取ることに象徴されるように、臨機応変な立ち位置からのポゼッションが今季の横浜の特徴だ。だが、そこでバランスを崩してしまえばボールロストした後にカウンターからピンチを招く。特にこの日の仙台は受動的な守備ブロックから素早い攻撃を狙っていた。
 
 その点で、この日のポゼッションは選手間の距離が近く、さらに切り替えの早さに象徴される守備意識の高さも特筆に値した。インサイドハーフとして新境地を開拓した大津祐樹が率先して相手ボールを追いかけ、失ったボールをすぐに奪い返して再び攻撃をスタートさせる。そこから素早くサイドへ展開してフィニッシュに持ち込む攻撃で何度も仙台ゴールを脅かした。
 
 守備に注力したのは中盤の選手だけではない。最前線のウーゴ・ヴィエイラも積極的なチェイシングから相手GKのミスを誘ってゴールを決める。チーム全体が意思統一されていたからこその大量得点であり、2連勝だ。
 
 攻守両面で仙台を圧倒した。それでも2失点したのは次に向けた反省材料で、下位チームが団子状態のリーグ戦は予断を許さない状況が続く。残り6試合も攻撃にフォーカスしながらも、守備でどれだけ汗をかけるかが横浜の行く末を大きく左右しそうだ。
 
取材・文●藤井雅彦(ジャーナリスト)
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