【現地発】ヘタフェは欧州屈指の「アウト・オブ・プレー」の使い手。柴崎岳が“使われない理由”もそこにある

2018年09月29日 エル・パイス紙

90分のうち「実際のプレー時間」は平均で50分04秒。

ヘタフェのボルダラス監督は、ボランチに故障者が相次いだ試合でも柴﨑を使わず、CBのジェネで穴埋めしていた。超がつくほどの守備的サッカーには賛否両論が。(C)REUTERS/AFLO

 ヘタフェの守備重視の戦い方が今シーズン序盤、完成度を高めている。

 就任3年目を迎えるホセ・ボルダラス監督の戦術がさらに浸透し、ラ・リーガ第4節を終えた時点でのファウル86回、イエローカード17枚はいずれもリーグ最多。イエローカードに関しては、個人でもCBジェネの4枚がリーグ全体でもっとも多い。

 徹底したリアクションサッカーを見せるそんなヘタフェの戦い方を象徴するのが、1試合平均50分04秒というアクチュアル・プレーイングタイム(実際のプレー時間)の短さだ。

 つまり、試合時間の90分のうち、その半分近くはファウルなどによって、あるいはボールがラインの外に出たりしてプレーが止まっている計算になる。

 これはラ・リーガはもちろん、リーグ・アンのマルセイユ(50分58秒)、ブンデスリーガのヴォルフスブルク(51分08秒)、プレミアリーグのボーンマス(51分23秒)、セリエAのスパル(52分45秒)と各国リーグの1位のチームをも上回る、欧州5大リーグでトップの数字となる。
 
 この守備重視の戦いが奏功し、ヘタフェは4節までの3試合でクリーンシートを達成。13試合を無失点に抑えた昨シーズンのペースを大幅に上回る。

 アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督は、5節でヘタフェと対戦する前に、相手の印象について「タフなチームだ」と語った。

 この見解についてボルダラス監督は、「チョロ(シメオネの愛称)がそういうのだから、うちはアグレッシブで、コレクティブなチームということだろう」と、ポジティブに受け止める。

 堅固な守備を披露する一方で、柴崎岳のような"ボールプレーヤー"の居場所を見出せないボルダラス監督には賛否両論あるが、そうした周囲の声についても、「べつに何を言われようが構わない。ヘタフェがスモールクラブだと言うことを忘れないでもらいたい。その中で、我々はベストを尽くしているまでだ」と意に介さない。

 今後もヘタフェはできうる限り、試合をストップさせる戦いを貫いていくはずだ。アウト・オブ・プレーの時間が増えれば、攻撃されるリスクは減り、ボルダラス監督の戦術が効果を発揮する。それがヘタフェの勝利の方程式なのである。


文●ゴルカ・ペレス(エル・パイス紙)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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