中島翔哉、小林祐希らを育てた名物指導者がスペイン研修へ! R・ソシエダでの驚きに満ちた1年を語る

2018年09月29日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

R・ソシエダに共通する東京Vの魅力

PROFILE とがし・こういち/ 71年7月15日生まれ、神奈川県出身。現役時代は読売/V川崎、横浜F、札幌でプレーした元DF。引退後に指導者としてのキャリアをスタート。育成畑で実績を積み、チームマネジャーやスカウトも経験。14年途中に東京Vの監督に就任し、約2年半チームを指揮。退任後の昨年3月にスペインに渡り、レアル・ソシエダで1年間の研修を終え、現在に至る。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 とにかく、熱い男だ。
 
 身体中から発せられるバイタリティに気圧されそうになる。ひとつの質問に対して、答が10も20も返ってくる。そうした言動から強く感じたのは、底なしのサッカー愛だ。
 
「監督とか、やりたいと思ってもできないけど、そこで求められる人間になりたい。フロント業務も含めて、人として魅力や知識がなければ必要とされないと思う。しっかり勉強して、それをピッチの中に落とし込めるようになりたい」
 
 冨樫剛一、47歳。
 
 東京Vの前身、読売クラブの下部組織で育ち、現役時代は読売/V川崎、横浜F、札幌で活躍する。引退後は指導者に転身し、様々なカテゴリーで子どもたちを教え、2014年シーズンの途中から東京Vの監督に就任。約2年半に渡り、トップチームで指揮を執った。
 
 そして監督を退いた後の昨季、強化部ダイレクターの職に就いた冨樫は、日本協会とJリーグの協働プログラムによる指導者の海外派遣の制度を利用して、スペインへ飛び立つ。研修先はレアル・ソシエダ(以下、R・ソシエダ)に決めた。
 
「2部に降格したあと、下部組織の選手を中心に編成して、2部で優勝して、1部に復帰。ヴェルディも同じようなチームだし、共感が持てた」からだ。
 
 研修期間は1年間。「本当にたくさんのことを感じられたし、コアな部分も見させてもらった。すごく貴重な経験だった」。なによりも吸収したかった育成面でも収穫があった。
 
「ソシエダは週に一度、全カテゴリーで同じトレーニングをするんです。練習メニューもメソッド部門が管理していて、パソコンのボタンをポンと押せば引き出せる。そうやってクラブのプレーモデルを与えていくやり方は、日本では聞いたことがない」
 
 ある日のユースの紅白戦では、驚かされることがあった。冨樫、育成部長、GMの3人でゲームを見ていたが、後半はGMの姿が見当たらない。どこに行ったかと思えば、選手たちに交じって、ピッチの上で最終ラインから指示を出していた。
 
「あとでそのGMに聞いたら、『俺たちの未来があそこにある。できないことがあれば、すぐに伝えるべきだ』って。若い子たちと一緒にボールを追いかけるそのGMを見て、気づかされる部分はありました」
 
 選手とスタッフ、あるいはカテゴリーの垣根を超えて、クラブ全体で強くなろうとする姿勢を目の当たりにした。もっとも、そうした気風は馴染み深いものでもあった。
 
「ヴェルディでも、ユースの監督がジュニアユースの選手に指導するのは日常的なこと。誰々はこうだよねとか、そういう話が普通にできる。だから、なんか懐かしかったですよね」
 
 異国の地で新たな発見もあれば、ヴェルディというクラブの風通しの良さ、その魅力を再確認できたのは大きかった。

【PHOTO】東京Vを彩る美女チアリーダー『ヴェルディヴィーナス』!

次ページフットボールの細分化と数字化の必要性

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事