【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|今まさに訪れた「紙の時代」

2018年09月13日 サッカーダイジェストWeb編集部

誰もがスマホを持つ時代になった今、指導の現場でも昔とは変わってきている部分が…

指導の現場も以前とは様変わりしてきているという三浦監督。メディアの変化とともに、それに接する人間にも変化が起きている!? (C) SOCCER DIGEST

「紙の時代ではないから…」
何の話であろう?
インターネットが発達し、あらゆる情報がネットを通じて飛び交うようになった。
「紙」。即ち本や新聞、雑誌の事を言う。
 
 僕はそんな時代に反して紙が好きだ。アナログの昭和を象徴する人間なのか……紙はホッとする。
 
 不謹慎なのを承知で言うのだが、僕は昨年、鹿児島へ来て生まれて初めて自ら新聞を取った。現役時代のアビスパ福岡から単身でチームを転々としているが、個人で新聞を取ったことはなかった。
 
"不謹慎"というのは、福岡時代はあるスポーツ紙のコラムを、神戸ではデイリースポーツにサッカーのコラムを阪神タイガースの大きな記事の横に載せてもらっていたにもかかわらず……、申し訳ないが新聞は取ったことがなかったのだ。
 
 静岡新聞も地元、清水エスパルスでプレーした時期も、さかのぼれば読売クラブ時代、読売新聞のチームでありながら新聞を取ろうともしなかった、そんな僕が鹿児島で初めて新聞を取り、毎朝楽しみにポストを開ける。立体駐車場のスイッチを押し、車が来るまでの時間、新聞を開き、目を通す。
 
 新聞や雑誌が売れなくなっていると聞く昨今の時勢に逆行するように、僕は紙から鹿児島の情報を得ているのだ。
 
 僕の愛読紙は南日本新聞。
 
 もちろん週に多い時には練習を2回、番記者が試合はもちろん、練習まで真剣に取材をしてくれる事もあるが、
 
 それは何処の地でも同じ。そうでありながら何故、今だったのかは分からない……(笑)。紙の新聞を取りたいと思ったのだ。ただ気持ちが欲したのだ……。
 
 そんななか、ネットの影響というのはスポーツ界、いやサッカー界にも大きな影響を与えている事は確かだ。もちろんポジティブな意味でもネガティブな部分でも、である。
 
 現場の指導という立場で言えば、スマホを誰もが手に持つ時代となった今、昔とは変わって来ている部分もある。
 
例えば指導者(監督でも社長でも、上司に例えて欲しい)があることを質問する。
 「〇〇はどうだ!?」と、考えを聞かせてくれと言うと……。
答えはなかなか返ってこない。
 
 質問の意味が分からない訳でもない。スポーツで分かりやすい例を出せば、「怪我の具合、身体の具合はどうだ?」と聞く。
 
「大丈夫です」くらいしか返って来ない。聞く選手は何処か問題があるだろうという選手だが、答えはいたってシンプルだ。
 
 今、人は人前で答えるのが苦手になっているように思える。それは日頃の習慣がすべてとは言わないが、スマホで返事をする事が多くなっているからかもしれない。SNS、LINE、ツイッター、Facebook、インスタ、パソコンなどで会話をする習慣が人のコミュニケーションの能力を落としている事につながっている。ショートメールで会話をすると、実に良い返信が戻ってくればそう言わなければならない現実だ。
 
 サッカーの戦術的な事には答えのない質問が多い。正解も不正解もない。心配しなくて良いから即答すれば良いのだが、スマホを使いgoogleで答えを調べる癖がついているのか……。
 
 質問の答えを躊躇する事が多いのが現実だ。
 
 紙とデジタル化の関係は人が人と触れ合い、顔を合わせて生きていく関係にも違いを生み出しているのであろう。
 
 世の中が紙の時代ではなくなり、人が人を育てる時代ではなくなる。人を育てるのがロボットの時代になってしまうのか……。
 

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