初陣の戦術的志向はハリル寄り。”森保カラー”を披露するのはまだ先か

2018年09月12日 清水英斗

システムのかみ合わせとして両サイドバックが浮きやすかった

堂安(21番)や中島の仕掛けは効果的だった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 森保ジャパンの初陣となったコスタリカ戦は、3-0で勝利した。印象的だったのは、アグレッシブなプレスと、ダイレクトにゴールへ向かう攻撃、そして個の仕掛け。シンプルな試合だった。ハリルジャパンに志向が似ている。これが最終型とは思わないが。
 
 どのようにスタートを切るか。初陣は自身のセオリーに従い、サンフレッチェ広島時代を思わせる3バックの可変的ビルドアップから着手するのではと考えたが、その予想は外れた。後方でボールを持つことより、シンプルに縦、縦、縦。
 
 広島がJリーグで戦うことと、日本代表が世界で戦うこと。それは素材も相手も異なるチャレンジであると、監督自身は認識しているのだろう。たしかに、広島時代に見られた5-4-1の低い守備ブロックで守りきれるのかどうか。この点だけを考えても、世界の舞台とは事情が違う。
 
 あるいは、この初戦で自分色のアイデアを詰め込むあまり、経験の少ない選手が脳みそを握られた状態でサッカーをすることを避けたかった。そんな事情もあるのではないか。実際、先日のアジア大会を振り返ると、特にグループステージのU-21日本代表は、型にハマってアクションを起こせなくなる様子が顕著だった。今回は選手が慣れている4バックで、特に攻撃の選手を、シンプルに解放したかったのかもしれない。森保監督が「サッカーのベース」と語る、球際やチームスピリットを見定めるために。
 
 この試合は相手との相性もあり、縦に速いダイレクトプレーが効果的だった。5-3-2のコスタリカは、FW2人が槙野智章と三浦弦太の前に立ち、MFの2人が青山敏弘と遠藤航をマークする。日本は真ん中を抑えられ、ボランチを経由した攻撃をやりづらいが、システムのかみ合わせとして両サイドバックが浮きやすい。
 
 室屋成や佐々木翔から、斜めに縦パスが出る。小林悠に入れてダイレクトプレーでゴールへ迫るか、あるいは2列目に当てる。南野拓実はターンしてかわしたり、あるいは遠藤がサポートしたり。中島翔哉や堂安律のサイドへ展開し、仕掛ける。いずれのパターンもDFから縦パスが入ると、そこからのテンポが速く、小気味よく攻め切った。合宿でタッチ数制限のトレーニングをした効果もあるのだろう。人に食いつくコスタリカDFに対し、ワンタッチのダイレクトプレーが効いた。
 

次ページおそらく森保監督は、今の段階でははっきりとした最終型をイメージしていない

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